日本人の身体使いは「手先で体幹をコントロールして正中面上で身体を割る」

はじめに

現在、「ロルフィング®︎のたちばな」では「4つの支持軸タイプ」という観点でロルフィング®︎やムーブメント・ワークを考えています。

4つの支持軸タイプとは、

①内側軸(1軸):日本文化的身体の使い方
②中間内軸(2軸):白人文化的身体の使い方
③中間外軸(3軸):ラテン系的身体の使い方
④外側軸(4軸):黒人文化的身体の使い方

に分類されます。

▼画像のように足底の各ライン上に体重を支える点(支持点)を置くことによってその使う部位によって身体全体の特徴的な動きが生じるというのが支持軸の考え方になります。

それぞれ特徴がありますが今回は日本人の文化的な身体使いである「内側軸(1軸)」についてです。

「内側軸(1軸)」の特徴としては体幹は意図的に動かすことや捻ることは苦手であり、手先・足先から身体を使うことが要求されます。

逆に言えば手先、足先という末端部分から動かして結果的に体幹の動きを受動的に引き出すのが日本人の適切な身体使いになります。

これがわからないと「内側軸(1軸)」傾向である日本人が体幹の可動性や固定性をトレーニングで向上させてもスポーツやダンスのパフォーマンスは向上しません。

何故ならそもそも意図的に体幹を動かすこと、捻ることが「内側軸(1軸)」の身体使いだと向いておらず、むしろ制限をかけてしまうからです。

自分自信、黒人の動きを身につけようとストリートダンスを学びながら「インターロック・エクササイズ」という体幹を連動させるトレーニングを集中的に行なっていた時期があります。体幹はかなり動くようになりましたがあまりスポーツには活きませんでした。ストリートダンスの動きもやはり日本人の特徴を色濃く残したままでした。

その理由は「内側軸(1軸)」をベースに身体を使っていたからです。

手先から動くとは?

では日本人の文化的身体使いである「内側軸(1軸)」を機能させるのに必要な手先・足先から身体を使うとはどのようなことなのでしょうか?

ちょうどわかりやすいシーンが納められている沖縄拳法空手の動画がツイッターで回ってきたのでご紹介します。

▼のものですが長いので、下に必要な部分を切り取りした動画を貼り付けています。

▼手先から動くシーン

日本人の得意な身体使いというのは▲の動画のように手先から動くものになります。

これは沖縄拳法空手特有のものではなく日本の武術全般(剣術、合気道など)はこうした身体使いが求められます。

こうした身体使いを“ロルフィング®︎のたちばな”では「末端主導体幹操作」と呼んでいます。

体幹を捻るのではなく割る

最近、「末端主導体幹操作」系の動作トレーニングを開発しましたが、「内側軸(1軸)」を使ってこの動作トレーニングを行なうと面白い現象が起きます。

それは、身体の中心(正中面)で身体が二つに割れたような身体使いになるということです。

もちろん実際には身体は割れたりはしません。

ですがまるで真っ二つに「割れた」ような感覚になるのです。

そして、興味深いのはこれは無意識的に起こるという点。

日本の武術では「身体を割る(割体)」という発想がもともとあります。なので身体をなんとか割ろうと工夫を凝らしているという話をよく目にします。ですが中々身につけることが難しいのです。

ですが、「内側軸(1軸)」を活用して「末端主導体幹操作」の動きを行なうと自然に正中面上で身体が左右に割れるような動きになります。

これが他の支持軸で同様の「末端主導体幹操作」のトレーニングを行なっても身体は割れません。

身体を捻る動きがでてきます

先日、週1ペースで開催している「軸トレーニング研究会クラス」にて実験してみました。「4つの支持軸」をそれぞれ使い「末端主導体幹操作」トレーニングを行い、パンチの軌道でその違いを確認してみました。

①内側軸(1軸)では真正面に突く形になりますが他の3つは、

②中間内軸(2軸)

③中間外軸(3軸)

④外側軸(4軸)

の順番で捻れ具合が大きくなりました。

これは支持軸の違いによる重心移動距離と一致します。

①内側軸(1軸)という身体使いは体幹を捻ることが向いていない代わりに「身体を正中面上で割る」という動きを選択するということです。

手先から動いて体幹を変形させる

西洋的な身体使いをイメージすると自分自ら体幹を意図的に動かそうとしてしまいますが、日本人の文化的身体使いである「内側軸(1軸)」は手先・足先に引きずられるようにして体幹が動きます。

この方向で身体を開発していくと、結果として“受動的”に体幹の可動性が表れます。“能動的”ではないことが重要です。

現在の日本での動作トレーニングの方向性は、「内側軸(1軸)」の観点からするとズレているように考えられます。

体幹は“能動的”ではなく“受動的”に開発しないと「内側軸(1軸)」では機能しません。

終わりに

ここ20年間「身体を割る」ことにもチャレンジしてきましたがやっと再現性のあるトレーニング方法を開発できてきました。

この「内側軸(1軸)」を活用した「身体を割る」感覚がわかると何故日本の武術についての理解が自然に深まります。

合気道への理解はそのまま直結しますので、劇的に技が効くようになりますね。

但し、日本人の文化的身体使いである「内側軸(1軸)」は基本的に身体を捻ることには向いていません。

その為に西洋由来のスポーツやダンスで日本人が挑戦する場合にはまずはそのスポーツやダンスが要求する支持軸タイプの動きを習得した上で、日本人の「内側軸(1軸)」を活かす取り組みをすることが必要になります。

「内側軸(1軸)」のみでなんとかしようとすることはかなり不利です。

そして、一番重要なことは現代の日本人は文化的身体使いである「内側軸(1軸)」も上手く扱えていないということです。

合気道をしている日本人が技が効かなくて四苦八苦しているのは単に「内側軸(1軸)」が使えていないからです。

合気道は「内側軸(1軸)」を鍛えるように体系化されているので「内側軸(1軸)」が使えるようになった途端に技が勝手に効くようになります。

面白いものです。