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軸の正体シリーズ⑤:力学的特性

はじめに

「ロルフィング®︎のたちばな」では軸を4つに分類(「4つの支持軸タイプ」)して現在考えています。

⚫︎内側軸:1軸(画像での①)
⚫︎中間内軸:2軸(画像での②)
⚫︎中間外軸:3軸(画像での③)
⚫︎外側軸:4軸(画像での④)

ここでの「軸」とはカカトから各軸のラインを主に体重を支える部位(体重の支持点)として使用することです。

これまでは単に「軸」と表現してきましたが支持軸と呼ぶとわかりやすいので今後は4つの支持軸タイプと呼びたいと思います。

今回はこの「4つの支持軸タイプ」の特徴を産んでいる力学的な側面についてです。

4スタンス理論との違い

最近、「4スタンス理論と同じですか?」といった質問を多くされることが増えましたが「4つの支持軸タイプ」は「4スタンス理論」とは内容も考え方も異なります。

「4スタンス理論」では▼の画像のような足裏のロゴで表現されており、これが僕が提唱する「4つの軸タイプ」に似ていること、共通の「4」という数字が使われている為に「4スタンス理論」と結びつけやすいのだと思われます。

ですが「4スタンス理論」の書籍を読むと実際は▲のようなロゴの考え方とは異なることがわかります。「4スタンス理論」の説明に上記のようなロゴを使うのはかなり誤解を広める原因になっているように思うのです。「4スタンス理論」と「体重の支持点」は基本的に無関係と考えてよいでしょう。

「4スタンス理論」は実際には▼の画像のように身体の部位5点の内、3点をまとめて使う2つのパターンによってAタイプ、Bタイプと分類しています。これに四肢の内旋・外旋の2パターンを組み合わせて4つの分類をしています。

それに対して「4つの軸タイプ」は厳密には4つに限定されるものではありません。

「支持軸」はあくまでも体重の支持点を足裏のどこで主に置いているのかなので概念的には10個でも100個でも1000個でも増やすことができます。

足裏を長軸方向に千切りするように線を引くとこの線一つひとつが「支持軸」となります。

但し、ここまで細分化してしまうと逆に「支持軸」という概念が実践で活用できなくなります。

そこで今のところでは4つぐらいの分類が適当だと考えています。

おそらく今後「支持軸」の知見が増えて数を増やす必要がでてきた場合には現実的には9つまで増える可能性があります。

ひとまず「4スタンス理論」と「4つの支持軸タイプ」は全く異なる概念だと考えていただけると幸いです。

全く異なる概念なので組み合わせることも可能かと思います。

支持軸による表現の違い

▼画像の赤線は重心を通る地面と垂直な線(重心落下線)です。身体の中心と考えられますのでこの重心落下線を今後は「中心線」と呼びたいと思います。普通に立った状態では「支持軸」と「中心線」は別々に存在します。

それが片足立ちになると「中心線」と「支持軸」が一致することとなります。

この「支持軸」位置により身体の使い方がより足の親指に近い状態(「内側軸:1軸」支持)なのか、外側に近い状態(「外側軸:4軸」支持)なのかで一見同じような片足立ちに見えても微妙に身体のポジションの違いが表れます。

当然、体重の支持点が身体の中心から離れれば離れるほど中心線の移動距離は長くなります。

結果的に親指側の「内側軸(1軸)支持」よりもお指側である「外側軸(4軸)支持」の方が大きく重心が移動することとなります。

そしてこれが体幹の可動性と密接に関係するのです。

▼「内側軸(1軸)支持」例:ばってん少女隊 希山愛さん

▼「外側軸(4軸)支持」例:テニスプレイヤー 大阪 なおみ選手

同じ片足立ちですが大分印象が違います。これは手を挙げている・いないだけの問題ではないように個人的には感じます。

「内側軸(1軸)支持タイプ」では膝を中心線に近づける戦略をとる傾向がありますが、「外側軸(4軸)支持タイプ」では中心線に膝を近づけるとバランスを取る為に体幹をひしゃげる必要があるのでむしろ中心線に膝は近づけません。

これらの片足立ちでの見た目や印象の違いはそれほど重要ではないように感じられる方がおられるかもしれません。

ですが、これは見た目以上に大きな違いを産みます。

「体幹の可動性」と「重心移動の距離」

「支持軸」の位置により身体の動かし易い部位が変化します。

▼画像の各線は各支持軸での動きの起点になります。

①緑線:内側軸(1軸)支持:股関節から下が動かしやすい。
②青線:中間内軸(2軸)支持:みぞおちから下が動かしやすい。
③黄線:中間外軸(3軸)支持:頭部から下が動かしやすい。
④赤線:外側軸(4軸)支持:頭上から下が動かしやすい。

これは中心線が支持軸までの距離によるもので、足裏の支持点が外側(小指側)になればなるほど重心の移動距離が増えるので、力学的な結果として体幹が可動しやすいということです。

この力学的な側面がわかると各支持軸タイプの特徴が理解しやすくなります。この視点で「軸の正体シリーズ」で取り上げたダンスやサッカー選手の動きを見てもらうと支持軸タイプと動きの特徴が一致しているのがわかりやすいでしょう。

体幹の固定と可動性

「内側軸(1軸)支持」では体幹を動かそうとしても固定されます。

逆に、「外側軸(4軸)支持」では体幹を固定しようとしても勝手に動いてしまいます。

これは「支持軸」の特徴です。

「支持軸」の特徴を無視して見た目のフォームを追求すると非常に残念な結果になります。

日本人の文化である「内側軸支持」はダンスやスポーツが苦手

日本人の文化的な支持軸は「内側軸(1軸)」になりますが、これは基本的に体幹が動かずに固定した使い方が特徴になります。

最近のスポーツトレーニングでは体幹への注目度が高まっており、体幹の可動性や自由度を高めるトレーニングを重視しているトレーナーが増えているように感じています。

20年ほど前に密かにブームとなった「胴体力トレーニング」などはその先駆けでしょう。某トレーナー団体では海外に体幹トレーニングなどを輸出しようとしています。

但し、「体幹の可動性」と「重心移動の距離」の論理がわかると別の側面が見えてきます。

誤解を怖れずに言えば「内側軸(1軸)支持」では基本的に体幹を動かす必要性がありません。無理やりに体幹の可動性や自由度を高めても西洋由来のダンスやスポーツには役に立ちません。

逆に、その他の内側軸以外の3つの支持軸ではそもそも体幹がその支持軸の特徴によって動きやすいので改めて体幹の可動性や自由度を高めるトレーニングは必要とされません

こうしたことは海外のボディワークを学ぶとよくわかります。海外では全く動作関係の具体的なメソッドがないようなのです。

実際、大型書籍で探しても日本人の著者によるものは多数存在しますが動作関連の翻訳本は一切ありません。逆に筋力トレーニングや施術系の書籍では海外のものが多数です。

海外で生活した経験がないので実際のところはわかりなせんが、様々な動作トレーニングが開発されているのは日本ぐらいではないかと思います。

その理由はこの「4つの支持軸タイプ」の特徴がわかると見えてきます。

西洋由良のダンス・スポーツの競技特性は「内側軸(1軸)支持」が一番苦手とします。苦手なので色々と工夫して様々なメソッドが開発されます。ですが「内側軸(1軸)支持」以外の3つのタイプは普通にそのダンスやスポーツの練習を反復するだけでそれなりに上達できてしまうのです。

日本の動作関連のメソッドの多くは日本の武道・武術を参考にしているものが多いのですが、これがそもそもの間違いだったりします。日本の武道・武術は典型的な「内側軸(1軸)支持」の動作です。

この武道・武術を参考にしてもなかなかスポーツやダンスにて結果がでないのはこのような支持軸の不一致があるからだと個人的には思います。

終わりに

「4つの支持軸タイプ」をそれぞれトレーニングしていて強く感じるのですが本当に「内側軸(1軸)支持」は西洋由来のスポーツやダンスでは不利に働くと言うことです。

逆に「外側軸(4軸)支持」のトレーニングをするとこんなにあっさりスポーツやダンスの動きができてしまうのかと拍子抜けしてしまいます。

実際のところ現代人は「内側軸(1軸)支持」の動きすら習得できていない傾向があります。

昭和の時代までは和式タイプのトイレが多くありましたが毎回のトイレが「内側軸(1軸)支持」のトレーニングになっていたと考えられます。

「内側軸(1軸)支持」で腰をかがめると非常に股関節の可動域が広がるのを実感します。これを「内側軸(1軸)支持」とは対照的な「外側軸(4軸)支持」で行うと可動域が狭まり安定性も欠きます。

某古武術系の書籍には

⚫︎足の母指球を使わない方がよい
⚫︎足の小指球を使うべき

との記載がありました。

これは著者が「内側軸(1軸)支持」を使えないことを示しています

昭和の時代の武道・武術家の教えでは逆に母指や母指球を使うことが示されています。

その代表的な人物は養神館合気道創始者の塩田剛三翁です。

塩田剛三翁が砂利道を歩くと「足の親指の跡がくっきりと残っていた」という逸話がありますが、実際に合気道の演武や歩きを見ても「内側軸(1軸)支持」を有効に使っているのがわかります。

▼塩田剛三翁の歩き姿

日本の古武術の型や技法は「内側軸(1軸)支持」でないと使えませんし、これで稽古すると思っている以上に容易に技が効いてしまいます。

「内側軸(1軸)支持」では母指球を積極的に使用します。

「4つの支持軸」の視点を持ってスポーツ、ダンス、武道などに取り組むとかなり効率的に上達できます。

「4つの支持軸」の観点を持ってロルフィング®︎の個人セッションや軸トレーニングWS「重心コントロール」を開催しているのでご興味ある方は是非お問合せ下さい。

各WSについては▼リンク先をご覧下さい。

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