はじめに
最近、リズム感のワークを開発しました。
自分が以前ストリートダンスを学んでおり、現在の身体操作開発のセッションでは、
⚫︎ロルフィングの視点
⚫︎スポーツの身体操作の視点
⚫︎武術的身体操作の視点
に加えて
⚫︎ダンスの身体操作の視点
という4つの視点で考えています。
ダンスの身体操作の視点では「インターロック」という身体連動動作を重視しています。
ここでのインターロックは七類誠一郎氏(トニーティー先生)の著書「黒人のリズム感の秘密」で知られる7つのインターロックに限定するのではなく、より広い意味で使用しています。
実は「リズム感」のトレーニングもセッションで実施したいとは常々思っていたのですが、身につけることはそれほど簡単ではありません。後ほど語りますが、自分の場合は数年の期間を要しています。
同じことをクライアントさんに指導することはできませんのでずっと温めていました。
それが、最近言語・視覚・聴覚系の「認知特性トレーニング」というワークを開発し効果を上げ始め、この手法を「ダンスのリズム感」に応用できたら効率的にダンスのリズム感の習得に役立つのではないかと探求を始めたところ、かなり驚異的な効果を出すことに成功しました。
たった10分ほどベットに横たわり音楽を聴くだけで、リズムが身体の中に入り全くダンス未経験のクライアントさんが動作と音楽のリズムを同期させることができるようになりました。
そして、その同期した動きはまさに「インターロック」でした。
経緯
自分はダンスを学び始めた当初、トニーティ先生の7つのインターロックを出勤前、昼休み、帰宅後などなんとか時間を確保して毎日3〜4時間ほどトレーニングしていましたがなかなか上達はしませんでした。
また、ダンスは3年ほど学びましたが結局これがダンスの「リズム感」だと実感できるものを身につけたのはロルフィングを学ぶ為に岡山県から東京に戻ってから1年ほどした時期でした(つまりダンスを辞めてからのこと)。
最終的にはポッピングというジャンルのダンスに使われるようなゆっくりとしたリズムかつビートが強く鳴る音楽を音量を最小限にしてイヤホンで微かに鳴るビートに意識を向けるトレーニングで最低限のダンスのリズム感を身につけるに至りました。
これだけのトレーニング量にしては上達するまでの時間はかなり遅い部類に入ります。
最近わかったことですが自分は「聴覚情報処理障害(Auditory Processing Disorder=APDと略されることが多い)」という聴覚系の処理が苦手な傾向があるようで、これがかなり「聞く」という行為に対してボトルネックとなっていたようです。
元々学校などの講義を集中して聞くことができずに、10分もすると妄想に耽る傾向が昔からありましたがこれはまさに「聴覚情報処理障害」の症状に当てはまります。
自分には「聴覚情報処理障害」の傾向があると分かったのでせっかくだからロルフィング的な手法などを使って少しでも改善する方法がないかと探求してできたのが「認知特性トレーニング」です。
さらに、この認知特性トレーニングの手法を「リズム感」習得に応用したのが今回の話のメインになる「リズム感ワーク」です。
リズム感ワークのやり方
「リズム感ワーク」はダンスのようなリズムトレーニングは行いません。
「リズム感覚」という知覚・認知系に働きかけます。
基本的にはベッドに横になってもらった状態で特殊な施術をほどこし、特定の音楽を大音量で聴いてもらうだけです。
効果
リズム感ワークの探求した際に、リズム感ワークの前後で▼のダンスを踊ってもらいました。
アップアップガールズ(2):「U(2)Zone LINE」(ユニゾンライン)
上記の青色の方のムーブがわかりやすいと思います。
難易度が高いムーブの1つで、ダンス未経験の方がすぐにできるものではありません。
なぜ難しいといえば、
⚫︎音楽のリズムを取る
⚫︎ムーブを意識する
の2点を満たさなければいけないからです。
この2つは共にダンスのリズム感が関係しています。
ワーク前はどこでリズムをとってよいのかがわからず、更にどのように身体を動かしたらよいのか分かりません。
それが、ワーク後では自然にリズムが身体に入るので、リズムが自然に取れるようになります。
更に、リズムが自然に取れるようになると自然に動作全てが「広義のインターロック(身体連動動作)」になるのです。
つまり、全身がつながって動けるようになります。
ダンスの練習をしてもインターロックは身につかない
広義のインターロックですがこれはダンスの練習を繰り返しても身につけることは非常に難しいと思われます。
ダンスを学んでいた当時の周りを見ても一定水準以上のインターロックを身につけたダンサーはかなり少ない印象でした。
これは論理的に考えると当然な結果です。その人の身体操作のレベルでダンスの表現を学ぶ訳なのでダンスの練習をしてもダンスは上達しても身体操作は上達しないからです。
例えをいえば、ノコギリを使って木材を切り工作をするとします。工作を繰り返せば工作のスキルは上がるかもしれませんが、ノコギリの切れやすさは変わりません。このノコギリがここでいうところのインターロックです。
よりよく切れるノコギリにするにはそうした取り組みをする必要があります。
自然にインターロックになる
「リズム感ワーク」を受けると動作自体がインターロックになるのです。
これはその場で自由に踊れるようになると言っているのではありません。
ダンスの練習をしていないのでその段階では踊れません。
但し、この身体でダンスの練習を行うと効率的に上達できるということです。
音楽にも4つの支持軸タイプがある
「ロルフィングのたちばな」では現在「4つの支持軸理論」を提唱しセッションを行なっています。
簡単に説明すると人間には4つのタイプが存在するという考え方です。
それぞれ
⚫︎1軸(内側軸):日本人に多い
⚫︎2軸(中間内軸):ヨーロッパ、アジア人に多い
⚫︎3軸(中間外軸):ラテン系
⚫︎4軸(外側軸):黒人に多い
4つのタイプが存在し、これは脳神経系の運動プログラムの違いによって生じると考えられます。
それぞれの支持軸には長所と短所があります(支持軸の特徴)。
実は音楽のリズムにも4つのタイプが存在することがわかってきました。
音楽の支持軸タイプに一致した支持軸を身体に通すことによってそのジャンルのダンスが踊りやすくなります。
HIPHOPのダンスですが、古典的なスタイルから現在ではアイソレーションを起点としたスタイリッシュなスタイルになってきているように思いますが、これは音楽がダンスのムーブを引っ張っている典型例です。
HIPHOPの音楽の支持軸タイプは「2軸(中間内軸)タイプ」になります。
2軸の特徴はアイソレーションです。
HIPHOPの音楽に適するようにダンスのスタイルは変遷しています。
これだけで一つの論文が書けてしまいますね。
黒人リズム感の正体
「4つの支持軸理論」の特徴や音楽タイプの知見から「黒人リズム感」とはどのようなものかがより分かってきました。
黒人の文化的支持軸の「4軸(外側軸)」と黒人の文化を考慮することで七類誠一郎著「黒人リズム感の秘密」に書かれている「黒人リズム感」はより具体的になります。
終わりに
「リズム感」というものがずっとブラックボックスでしたが「4つの支持軸理論」や知覚・認知系へのアプローチを組み合わせることによって、かなり具体的になってきています。
実は、スポーツや格闘技の世界でも「リズム感」は重要視されています。
度々、「この選手はリズム感がよい」などと指摘されることがありますが、そこには直接的な音楽は存在しません。
これがずっと謎だったのですが、この謎も最近解け始めてきました。
キーワードは言語です。
なぜ人間に「リズム感」が必要であったのか?
⚫︎音楽を演奏する為
⚫︎音楽を聞く為
というのは必然性がかなり薄いように思われます。
それよりも人間にとって「リズム感」の必然性があるものを探すと1つしか思い至りませんでした。
それが「言語」です。
人が言葉を話す為に「リズム感」という能力を手に入れたと考えると面白いかなと思います。
実は「身体の支持軸」と「発声(言語)の支持軸タイプ」を一致させることによって身体操作能力が自然に高まる現象を確認しています。
後日、この「発声」の支持軸タイプについて記事にしたいと思います。
身体操作だけでなく、英語の発音やリスニングとも関係してきます。