「メニューの選び方」はこちらを▶︎クリック

「引く使い方」と「手首操作による重心移動」

はじめに

最近関心があるのは、

①末端主導体幹操作で「引く動作」を行うこと。
②手首主導体幹操作で自身の重心を移動させること。

この2点です。

今回の練習会クラスのテーマとしてこの2点に関係するワークを実施してみました。

今回は初めて参加者がお一人だったのですが、今回も色々な発見がありました。

末端主導体幹操作で「引く」

末端主導体幹操作とは字のごとく手足と言った末端部で体幹をコントロールする身体の動作パターンのことを指します。

簡単に説明すると手を引っ張られた時にそのまま抵抗せずに肩、肩甲骨、肋骨、腰椎、骨盤、大腿骨、足などの各部位が手の動きを邪魔・抵抗せずに引っ張られるような身体の使い方です。

これができると「重心」が自然に移動し、重心が移動する際に生じる運動量を使うことができます。人間にとって「力(筋力など)」には反応しやすいのですが、力が「運動量」に変換されると途端に反応しづらくなるという神経系の盲点があります。

合気道などの武術系ではこの「運動量」を発生させる身体使いができると相手に察知されづらくなります。また、スポーツではボールを投げたり、蹴ったり、打ったりする大きな力源として「運動量」を活用しています。

「運動量」というと中々イメージがつきませんが「ニュートンのゆりかご」がわかりやすいです。

この端っこのボールが空中から隣のボールに衝突する際にかかっている「力」は重力しかありません(ボールを投げた際、空中を勢いをつけて飛んでいるボールにかかっている「力」も重力だけです)。でもボールは速度を持って移動していますがこれが「運動量」です。

「力」と「運動量」の定義は異なり、「力」には時間という概念がありません。なので「力」の形では「力」を伝達することができません。そこで「運動量」に変換することにより伝達することが可能になります。

これを【運動量保存の法則】と呼びます。

僕の不勉強な為、上記の物理的な説明は厳密的には間違っているかもしれないことを
ご理解下さい。

ここでお伝えしたいのは「力(質量×加速度)」と「運動量(質量×速度)
は異なる概念であり、「運動量」と言う考え方を持つと身体の使い方やスポーツ、ダンスなど
のパフォーマンスを向上しやすくなるという点ですm(_ _)m

練習会クラスでは対人ワークで、できるだけ相手に感知されづらい身体使いを練習することが多いのですが、人間同士で感知されづらい動きとは「運動量」が発生する動きなので結果的にスポーツにも有効となります。

これまではこの「末端主導体幹操作」は押す動作で指導させていただいていたのですが、柔道をされているクライアントさんへのロルフィング®︎の個人セッションにて「これは引く動作でもできますか?」という質問を受けました。

個人的には「押す」があるならば「引く」もあるはずだとはおぼろげに考えとしてはありましたが、まだ探求は深めていなかったので今回の練習会クラスの課題として「末端主導体幹操作」での「引く」バージョンを試してみることにしました。

棒を引くワーク

そこで「引く」動作でわかりやすいワークは何かと考えたところ、「棒を引っ張る」ことを思いつきました。

ちょうどワークルームに合気道で使う「杖(じょう)」がありましたのでそれを使うことにしました。

使い方は杖の端をパートナーにしっかりと両手で持ってもらった状態でもう一方の端を引っ張ると言うものです。

相手に感知されずにひっぱることができれば(運動量を活用)簡単にできますが、力んでしまうと抵抗されてしまい体格差があっても難しくなります。

試したやり方は下記の通りです。

①杖の真ん中から手を滑らせながら杖の端に歩いていきそのまま引く動作を行う。
②手首主導の動きで引く。
③「ひと〜つ」と声をかけながら引く。
④手のひらを叩いてから引く(皮膚刺激法)。
⑤股関節抜き(股関節の抜きポジション動作)を使って引く。

①杖の真ん中から手を滑らせながら杖の端に歩いていきそのまま引く動作を行う。

これは歩いていく感覚(運動量が発生)で引けるので個人的には簡単にできました。但し、参加者の方にとっては行う意図がわかりづらいようであまり上手くは行きませんでした。

②手首主導の動きで引く。

手首を小指側に曲げる動き(尺屈)で前腕の小指側の骨(尺骨)を操作して結果的に自身の重心移動が誘導できるのではないかと試してみましたが、やはりこれだけの操作では重心までは操作できませんでした。

手首の末端主導体幹操作トレーニングをしてもダメでした。身体の開発を進めればできるのか、そもそも不可能なのかは現時点で不明なので今後の課題とします。

③「ひと〜つ」と声をかけながら引く

これは上手くいきました。この「ひと〜つ」という言葉は魔法の言葉です。「ひと〜つ」という声かけをしながら動作を行うことにより身体のまとまりができた動きになります。通常は動かす部位に過度な意識が行ってしまうので身体のまとまりが乱れてしまいます。それが声を出すことで1つにまとまった動きになります。これは何も意図がわからない状態で行うのが1番結果が出やすい傾向があります。

何度か成功体験があると「ひと〜つ」と声を出すことが目的化してしまい、身体をまとめた状態にはならなくなります。

実際に今回の練習会クラスで参加者の方がこの間違いをされました。こうした経験は非常に学習を深めますので初期にはどんどん間違うと良いですね。

声かけは一種の演技見たいなものと捉えるとよいかと思います。演技も気持ちを入れずにセリフを言っているだけではお芝居は成立しません。

声かけはあくまでも手段。手段の目的化に関しては注意しても注意しすぎることはありません

誰もがはまってしまう罠です。

④手のひらを叩いてから引く(皮膚刺激法)。

前回の記事でご紹介した「皮膚刺激法」を活用したやり方です。これが1番明確で手取り早くできる方法ですね。手のひらを数回叩くことにより体幹の筋肉のスイッチがオンになり、身体のつながりができます。すると全身が勝手にまとまり何も意識することなく杖を引くことができます。

当然、抵抗する側も「皮膚刺激法」を使うと抵抗力が増すので途端に引けなくなります。なのでこうしたワークが進んできたら抵抗する側に「皮膚刺激法」を使ってもらい、引く側は何もしない状態で容易に引けるようにしたいですね。

⑤股関節抜き(股関節の抜きポジション動作)を使って引く。

これは②の手首主導の動きでは引けなかったことから苦肉の策として試したものです。股関節の抜きポジション動作を使って引いたところかなり容易に引けます。考えてみれば太極拳的動作で相手を崩すのと同じ原理です。

さらによくよく考えてみると押す動作の場合は「手」から動きます。その関係で引く場合にも「手」からと思い込んでいましたが、実は進行方向に近い部分から動きだすことが正解なのかもしれないと感じました。前方に重心移動するならば「手」から、引く動作とは後方への重心移動と考えられますから後方へは「足」からということ。

引く動作での末端とは「足」のことなのかもしれません。

当初は「姑息な手段だな」と思っていたのですが実は王道かもと考えを改めました(^ ^)

このことに気がついたことが今回の練習会クラスで、個人的な1番の収穫でした。

手首操作で相手の重心を崩す合気あげ

手首を操作して自分の重心を移動させる「末端主導体幹操作」を身につけるのに「合気上げ」が役立つだろうと試してみました。

立った状態で腕を上から体重をできるだけかけて抵抗された状態で結果的に手首を持ち上げられるか、というワークです。

目的としては、自身の手首の親指側に曲げる動き(橈屈)で自分の前腕の小指側の骨(尺骨)、肘、肩、肋骨、、、、足先を引き出していく身体使いの習得です。

手首の操作で自分の重心を移動させ、相手の重心をほんの1センチでよいので乱します。すると、相手の態勢は不安定になり相手にとって抑えていた腕が今度はその腕で自分を支えるという関係性になります(腕にぶら下がるような状態)

このような状態にできればあとは肘を曲げるだけで抑えられていた手首を持ち上げることができます(これが「合気上げ」)。

このワークの核は如何に相手の重心を自分の重心移動で崩すかという点。

通常は体格に優る男性が、小柄の女性でさえも両手で全体重を乗っけられて掴まれると合気上げ動作を行うのはかなり難しいのです。ですが、重心移動を活用すると体格差で大きく優る相手でも力感無く持ち上げることは理論上可能です。

まずは僕が抑える側で、参加者の方に合気上げを行なってもらいました。補助無しではさすがに無理ですがそこで手首の操作で重心を移動するように手首に少し僕が誘導をかけて補助したところ、重心移動による運動量が僕に伝わり、僕の重心が乱されそのまま肘を曲げれば「合気上げ」になる状態ができました。

参加者の方は「多少違いを感じる程度で何が起こっているのかはよくわからない」と話されていました。

実はこれが重要で、こうした対人ワークで教えられてすんなりとした実感を持ってできることは大したことはありません。

何か感覚が異なるけどもそれを認識できない身体使いを学ぶのが対人ワークの目的の1つです。当初は上手くできたとしても「できた」という実感は全くありません。

モヤモヤした感覚が残るのが一般的です。

ですが、それが正解。このモヤモヤした感覚とはまだ感知能力が低いから起こること。何度も成功体験とわざとダメなやり方を繰り返すことによりこの小さな感覚の違いが実は大きな違いだと認識できるようになります。

こうした認識になるとはっきりとした違いがわかるので自由にそうした身体使いができるようになります。

その後僕が行う番になりましたが、理屈はわかるのですが身体がまだ動いてくれないので補助無しではできませんでした。のびしろですね(^_^;)

自分の手で補助すると呆気なくできてしまいますので後はそれを補助無くできるようにしていくだけです。

あと、相手の重心を崩すのは「末端主導体幹操作」である必要は無く、「体幹主導末端操作」つまり体幹の動きを末端に伝える方法でもよいのでこちらのやり方も試してみました。

こちらはすんなり何の苦労もなくできてしまいましたので、「これは簡単なんだ」と参加者の方にも行ってもらったのですが運動量が伝わってきませんでした。

僕的には体幹連動運動であるインターロック ・エクササイズをトレーニングとして実践していた時期があるのでこちらのやり方の方が簡単だったようです。

インターロック・エクササイズなどの特異的なトレーニングをしていない場合、体幹はまず動かないので「体幹主導末端操作」のやり方でいきなり行うのは無理だと理解しました。

逆に言えば、「体幹主導末端操作」の評価としては使えるということになりますね。

吊り垂れる腕

合気上げの中で実験として吊り垂れた状態の腕で合気上げを行なってもらいました。この状態を自分だけで行うのは難しいので(僕も現在できません)補助してその状態にもっていきます。

この状態では自然に「吊垂縄の原理」が発動します。

吊垂縄の原理

吊り下げられた縄を全力で掴んでも、捕らえどころが無いので力をいれればいれるほど不安定に感じる現象のこと。その状態で他者に縄をランダムに揺すってもらうとその場に固定しようといくら努力しても手を動かされてしまう。

腕を抑えていても相手の反発反応が全くないので抑え方がわからないのです。この状態で先の手首主導の動きを行なってもらったところ見事に合気上げをされてしまいました。全く抵抗できません。

メカニズムはこのようにわかってきているのでこれもトレーニング方法を開発して身につけていきたいと思います。

まとめ

実は参加された方はロルフィング®︎10シリーズを受け終わっている女性の方なのですが、かなりの抵抗力を持たれています。

どういうことかと言うと、感知能力が高く、相手に抵抗されない身体使いをしようとしても感知されてしまいやすいということ。

練習パートナーとしては難易度が高いことになりますので個人的によい練習ができた1日でした。

今回は参加者1人でしたが来週は人数が増える予定です。

ちなみに、この練習会クラスは参加者がいるうちは開催していこうと考えていますが、参加者がもし月始めの時点でゼロが確定した月があったらそこで開催を即終了する可能性があります。

終了となると参加人数が安定して確定できる状態にならない限りは再開催は難しいと思われます。

ですので、もし少しでも練習会クラスにご興味ありましたら今のうちにご参加されることをオススメします。

練習会クラスの日程等は↓リンク先の【セミナー/イベント情報】からご確認下さい。

タイトルとURLをコピーしました