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「体幹の運動量」と「重心移動」と「居着き」

はじめに

昨日の練習会クラスでは、

体幹の運動量(重心移動)

をテーマにして実施ました。大まかな内容は下記の通りです。

⚫︎身体のゆらしについて
・重心移動の有無
⚫︎対人ワーク
・「肘落とし」
・「杖を引く・押す」
⚫︎ムーブメント
・股関節の抜きポジション(基礎)
・体幹主導操作系エクササイズ

4名の方々が参加されました。

今回も色々と興味深いことが起こりました。

重心移動の有無

大きくわけて身体を左右にゆらす際に2パターンのやり方・状態があります。

それは、重心が「移動しない」やり方と「移動する」やり方の2つです。

まずはデモンストレーションとして身体を左右にゆらす際の重心移動の有無でとのように印象が変わるかを確認してもらいました。

重心が移動しない身体のゆすり方とは厳密的な意味で重心が全く動かないということではありませんが、重心の左右の移動の幅が極力小さい状態です。大半の方が身体をゆらす際にこのような身体使いを行う傾向があり非常に固い印象になります。

重心が移動する身体のゆらし方とは、重心の左右の移動の幅が支持基底面の端もしくはそれにできるだけ近くまで移動できる場合のことです。身体全体が柔らかい印象になります。

支持基底面とは?

支持基底面とは簡単に説明すると立った場合の左右の足で構成される面のことです。この面の上に身体の重心があると安定して立ち続けることができますが、少しでもこの面から重心が外れると身体が倒れていくことになります。

上の図の赤色で囲まれた部分が支持基底面になります。この赤色の線近くまで重心を移せる場合が重心移動ができるということを意味します。

緑色の枠内でしか重心移動できない場合が重心移動の無い状態であり、青色の枠は本来の支持基底面内で重心を動かせる状態と緑色の重心がほとんど動かせない状態の中間ということになります。

機能的支持基底面とは?

立ち続ける際に、支持基底面から重心がはずれようとすると重心を支持基底面内に止めようとする無意識的な筋肉の反応が起こります。これは安定して立った状態を保とうと言う一種の防御反応です。この反応があるので転倒することなく立ち続けることができます。

ですが、本来の支持基底面よりも狭い範囲に重心があるのにも関わらずこの防御反応が起こるケースがあるのです。

これは実際の支持基底面は広いのにも関わらず脳内で捉えている支持基底面が狭い為に起こります。

この脳内で捉えている支持基底面を個人的に「機能的支持基底面」と呼んでいます。

この「機能的支持基底面」の広さの中に重心がとどまっているならば防御反応を起こすことなく身体を使えるいうことです。

そして、この「機能的支持基底面」はその人によって幅が異なるのです。

「機能的支持基底面」が狭い人が上の図の緑色の枠になります。「機能的支持基底面」が本来の「支持基底面」と同じ場合には赤色です。青色はその中間になります。

面白いのは例えば緑色の「機能的支持基底面」を持っている人の場合、実際には全くバランスが崩れる気配すらないのにも関わらず緑色の枠からほんの少しでも重心が外れそうになると強烈に重心を緑色の枠内にとどめようとする防御反応が起こるのです。

重要なことは実際には「機能的支持基底面」が緑色の枠であっても重心は緑色の枠の外に移動ができるということです。でもその状態でいる限りは強烈に重心を緑色の枠内に戻そうという筋肉の反応が起こり続けます。

脱力してもあまり効果が無い理由

感が良いかたはここで気がつくと思いますが、この重心を戻そうとする反応が身体を過度に緊張させる原因です。

なぜスポーツやダンス、武術などで脱力の重要性が叫ばれているかと言えば、身体が緊張した状態では重心を自由に移動させることができないからです。

実際の現場では、身体を脱力状態にしてもスポーツやダンスのパフォーマンスに効果が無いという事例は多く見受けられます。そもそもマッサージやエクササイズで身体の脱力を深めても翌日には戻ってしまい身体に定着しないケースがほとんどではないでしょうか。

その理由は簡単です。

「機能的支持基底面が狭いまま」だからです。

身体を何らかの手段で脱力状態にしたとしても「機能的支持基底面」が狭いままならば強烈な防御反応が起こり続け、身体を緊張状態に戻してしまいます。

確かに、脱力状態になれば「機能的支持基底面」が広がり易くなります。但し、「必ず」ではありません。広がり易くなる傾向があるということ。

重要なことは、脱力を深めるには脳内の「機能的支持基底面」を広くすることを1番の目的とすることです。

機能的支持基底面が狭い状態を「居着き」と呼ぶ

武術の世界ではこの「機能的支持基底面」が狭い状態を「居着き」と呼んで戒めています。

「機能的支持基底面」が広がり本来の「支持基底面」の広さに近づくほど「居着き」は解消されていきます。すると途端に武術の技の威力が高まるのです。

合気道を例にだすと合気道を実際に使うには「当身7割、投げ3割」と言われていますが通常の稽古では当身(突き)は一切稽古しません(昔は違ったのかもしれませんが)。

でも通常の稽古で「機能的支持基底面」が広げることができ重心移動を上手く使える身体になった途端に当身の威力が上がるのです。合気道の稽古法を「機能的支持基底面を広げる」という視点で見ると非常に合理的であることがわかります。

但し、それはあくまでも「機能的支持基底面を広げる」「重心移動を適切にする」という意図を持って稽古した場合に限ります。単に型通りに動いてもこのような成果は起こらないでしょう。

実際に多くの合気道家がこの身体を身につけることができずに四苦八苦しています。僕も合気道をしていましたが当時は全くできませんでした。

それが「機能的支持基底面」が広がり「居着き」が解消されていくと合気道の稽古は一切していないのに途端に浸透する打撃ができるようになったり、合気道の型で相手を容易に崩せるようになりました。

稽古をしていないので技自体は当然下手です。でも効いてしまうのです。

指先で摘んだ状態でも相手を引ける、押せる

今回の練習会クラスでは、前回に引き続き合気道の杖(じょう)を使い、パートナーに端をしっかり持って抵抗してもらった状態で重心移動で引く動作、押す動作を練習しました。

重心が適切に移動するならば1センチほど重心が移動するだけで相手を容易に引いたり、押したりすることができます。

これは重心移動による運動量を感知しづらい特徴がある為です。

やり方はいくつかありますが今回は肋骨を左右に振り子運動させてその運動量で杖を引く、押すことをテーマとしました。

エクササイズでは「体幹主導操作系トレーニング」と呼ぶ体幹部の可動性を引き出し、体幹の動きによって重心移動を適切に引き出す(「機能的支持基底面」を広げる)ムーブメントを実施。

体幹主導操作系トレーニングはいくつか種類がありますがその内の1つだけを行ったのですが効果は十分でました。

適切に肋骨の左右の動きによって重心を移動させて運動量を杖に伝達できるとそのまま勢いをつけるとかなりの衝撃力になります。

そして、ゆっくり行ったとしても重心が移動できれば指先で杖を軽く摘んだ状態でさえも相手に抵抗させずに容易に相手の身体を引いたり、押したりできるのです。

押す動作を行なっていくと昔読んだ漫画「拳児」にあった槍を突く動作が思い浮かびました。

漫画「拳児」では八極拳という中国拳法が登場します。八極拳は体術とともに槍術も重視するのですが、特に「李書文」という実在に存在した八極拳の達人の逸話が紹介されています。この「李書文」の打撃力が半端ないのです。

中国からの逸話であり、かつ漫画なのでかなり誇張されていると思われますが実際にそれだけ打撃力が強烈だったことは確かだと思います。

重心移動による衝撃力を体感すると逸話に近いことはあったのだろうと感じさせます。

漫画「拳児」の21巻はまるまるこの「李書文」の話なので興味ある方は読んで見てください。

ももクロの居着きの無い時代

練習会クラスが終了して参加者の方々と雑談をしていた時、ちょうど今回のテーマが体幹の運動量や重心移動、居着きの無さだったこともあり、ももクロの動画を見てもらいました。

「ももいろクローバーZ(ももクロ)」は僕が影響を受けたアイドルグループの1つです。

このももクロの2011年〜2012年の間が単純な身体の状態としての全盛期だと個人的には考えており、実際にロルフィング®︎やムーブメントの参考にしてきました。

師事している先生からももクロを紹介されたのが2011年。

当時はアイドルに対する偏見があったので真剣に見たのがその4年後の2015年の春でした。2011年時のライブのDVDを見て衝撃を受け、遅まきながらそのすごさに気づかされたのですが、もし紹介された時に真剣に見ていたなら全盛期のももクロをライブで見れたかもしれないのです。

もし全盛期のももクロを見れていたとするとぼくのロルフィング®︎やムーブメントは現在数年先を行っていたでしょう。それぐらいの影響力を受けたと想像されるほど物凄いパフォーマンスをしているのがDVDという動画からでも伝わってくるのです。

以前観覧したバレエのロパートキナは舞台から3階まで熱量が届いていましたが、先生曰くももクロの全盛期では日本武道館全体を包むほどのオーラが広がっていたとのこと。

ももクロのファン(モノノフと言います)の方が下記のようにライブごとに同じ曲の同じ場面を時系列に沿って編集した動画をツイートされていました。

これを見るとももクロ(特にセンターの百田夏菜子さん)のパフォーマンスの変遷が非常にわかりやすいと思います。

この動画をある程度繰り返し見たり、また音を消しても見ると違いがわかりやすくなるのでオススメです。

2011年時のももクロの勢いは凄まじくライブを行う度に観客動員を倍にしていき、1年で1,000名→10,000名に増やしています。当時全くアイドルに関心が無かった層を取り込んでいったことは有名な話です。

動画の1番始めのライブはその2011年の夏のもの。

前半から後半に向かうにしたがって身体表現の面白みがなくなっていくのを感じます。

前半では背骨の奥から身体を使い何気なく身体を震わせているのに対して、徐々に身体の表面の動きに移行していき静かになっていきます。

歌や踊りとしての技術は向上していますが、それに伴い僕が言うところの「素の身体の使い方」は低下しているように見えるのです。

何故前半に面白みを感じるかといえば、今回の記事で説明した「居着き」が無いからです。

この百田夏菜子さん自身は意図的に身体が自由に使えるかと言えばそうではありません。ダンスも元々得意ではなくダンサーとしては使えない部位が多い。

でも「居着き」が無いので背骨が無意識的に繊細にゆすれており、それが面白みとなって表現されます。

僕の主観性が強いのですが、1番始めのライブ動画では一歩も移動していないのに対して、見失うような感覚に襲われます。これは重心が微妙に防御反応無しで移動しているからです。

何故かこうした身体性をももクロは5名全員が持っていたのです(実際にはアイドルの天才4名とその4名についていこうとする1人)。

ももクロの身体が変わった理由

練習会クラス参加者のお一人から、

『なぜ、ももクロは変わってしまったんですか?』

とのご質問がありました。この時はしっかり答えることができなかったのでここで変わった要因について考えてみます。

理由はいくつか考えられます。

①年齢

まず1つ目は年齢です。基本的にももクロのメンバーも周りのスタッフも何故これほどの(この記事での文脈での)魅力があったのか具体的な要因は誰も知らないということ(歌もダンスも元々上得意ではなかった)。様々な条件が重なって能力が覚醒したのではないでしょうか。その為、その能力を向上させようとは誰も考えていませんから、年齢とともにその類い稀な能力が閉じてしまったことが考えられます。

②疲労

2つ目は疲労です。ももクロの凄さに気づいてから2010年から行われたライブのDVDを購入して順番に見ていきました。すると2013年で途端に動きが悪くなるのです。

アイドルという枠組みなので身体のメンテナンスにはアスリートほど力は入れられていないことが考えられます。

人気も急激に上がっていた時期ですから仕事もライブだけでなくメディアにも登場し疲労が蓄積したことは要因の1つとして考えられます。

③不適切な発声技法

入手できる限りの情報の中での最大の要因としてはこれです。

この点はももクロの振り付けをされている石川ゆみさんの著書にあります。

最近、ももクロのライブリハーサルで、「キミとセカイ」のあるパートで腕の高さがみんな揃ってなくて、注意したことがありました。

〈中略〉

それぞれ個性はバラバラですけど、基本的にユニゾンは揃えたいんです。でもある本番の休憩時にたまたま、ボイストレーニングの先生の部屋にごはんを持って遊びに行ったとき、その話をしたら先生が急に「じゃあ、ちょっとやってみましょう」と発声練習を始めてくださったんです。実際にももクロがやっていることに挑戦してみたんですけど、すごく難しいんです。ブレスを考えながら踊ってみたら、そこで初めて「これは手が下がるわ!」と気づかされて(笑)。考えながら踊っていたら振りに意識がいかなくなるし、彼女たちの気持ちがすごく理解できたんです。

みんな、いつか個性に変わる欠点をもっている(p122)

つまり、技術(発声の技法)に過度な意識を取られて、身体表現に悪影響がでているということ。

技術的に意識が取られるということが1番「素の身体の使い方」を低下させる要因になります。

無意識に近い状態(モード)でいなければいけないのに余計なメモリを使わなければいけない技法を使っている。

極限の集中状態を「ゾーン」と呼ばれていますが、上記のように意図が前面にでると「ゾーン」とは真逆のモードになります。

個人的には技術を習得するには無意識的かつ結果的に目的を達成できる手法を使うべきだと考えていますが、この著書の手法はこの点考えから考えると最悪の方法に思えます。

この著書で触れている時期がいつかは不明ですが、著書の内容と動画の後半のパフォーマンスはリンクします(技術偏重)。

このようにメモリを過度に無駄使いするような技術を使ったことにより「素の身体の使い方」という点での衰えを促進させた可能性は非常に高いと思うのです。

昨年、美輪明宏さんのコンサートを観覧してきました。

83歳にして凄まじい発声をしていましたがそれにも劣らず腕の表現が素晴らしかったことが印象に残っています。ダンサーではないので専門的な腕の表現ではありません。でも明らかに自由で全く制限の無い動きをされていました。

「本物がここにいるのに、、、」

と切なく感じたことを覚えています。

まとめ

「体幹の運動量」
「重心移動」
「居着きの無い動き」

は広い意味で捉えると同じことを示しています。

実際の「支持基底面」と脳内で捉えている「機能的支持基底面」の違いを認識することは上記の居着きの無い身体を身につけるのに手助けとなります。

意識というメモリを無駄に多く使ってしまうような技術の修得方法では見た目上の技術の向上にはよいかもしれませんが本質的な「素の身体の使い方」を低下させます。

美輪明宏さんに限らず本物はそのようなメモリの無駄使いする技術は選択しないのです。

スポーツ、ダンス、武術など分野問わず「居着きの無い動き」は本物を目指すには必須ですね。

↑の記事えは、「機能的支持基底面」についてもう少し踏み込んで説明をしています。

練習会クラスでは毎回思いついた内容を自由に行っていきます。ご興味ある方は↑のリンク先【セミナー/イベント情報】をご確認下さい。



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