ロルフィングとは10回の施術で全身を整えるアメリカで開発された整体(ボディワーク)です。

瞬時に筋肉をゆるませ、身体をつなげるテクニック(皮膚刺激法)

はじめに

身体の使い方の探求を始めた当初から空手は参考にしていました。

空手にはサンチン(三戦)という型があります。このサンチンの型を稽古する際によく先生が生徒の身体を「バチバチ」と叩くことを目にします。

この身体を叩く行為が、分野問わず身体の使い方を向上させるのに非常に有効なテクニックなのです。

身体の使い方を向上させる際に課題となるのが身体の力みを解消すること(脱力)と身体のつながりを作ることです。

それが、この「バチバチ」と身体を叩くテクニックを活用すると「脱力」も「身体のつながり」も瞬間的かつ無意識的にしやすくなります

実際にロルフィング®︎の個人セッションや練習会クラス、WSなどでこのテクニックを使うとそれまでどうしてもできなかったことが呆気なくできてしまう場面が多々あります。

この身体を「バチバチ」と叩く方法を「皮膚刺激法」と呼ぶことにしました。

今回はこの「皮膚刺激法」についてご紹介したいと思います。

皮膚刺激法とは?

まずは空手のサンチンで身体を刺激している場面をご確認下さい。動画の1番はじめの部分にでてきます。

サンチンは動く禅だ!Moving Zen, Sanchin. Gojyu-ryu Karate Kata

この動画では肩や背中、下肢を叩いています。叩き方は流派やその人によって多少の違いはあるようですが武道雑誌やYouTubeでは沖縄空手のサンチンというとこうした皮膚を刺激するテクニック(皮膚刺激法)が取り上げられています。

記憶を辿れば20年以上前の大学時代にはこの空手での「皮膚刺激法」の存在については知っていたと思います。

ですが当時は「何の意味があるのだろう?」と不思議には思いながらも実際に検証することはありませんでした。正直な話「それほど効果はないだろう」「検証するのがめんどくさい」と思っていたのです。

これは過去の大失敗の一つとなっています。もし当時検証していたとすると現在のロルフィング®︎やムーブメントの理解はもっと深くなっていただろうと思います。実際、この皮膚刺激法の発見から劇的に進歩しています。

動画では結構な力で「バシバシ」と叩いていますが実際にはそれほど強く叩く必要はありません。皮膚を「トントン」と刺激するだけでも十分に効果があります。

効果

皮膚刺激法の効果を列挙すると下記のようになります。いづれも瞬間的に起こる反応です。

①筋肉がゆるむ(脱力)
②身体がつながる
③各部位の筋肉の活性化(促通効果)
④感知能力向上(抵抗力)

①筋肉がゆるむ、②身体がつながる

皮膚刺激法を行うとまずその部位の力みがとれ脱力のしやすくなります。その脱力する影響により身体のつながりが通るようになります。

例えば、腕をバレエのように左右に開く際にどうしても力みが入ります。この力みがあると身体のつながりがその部分で滞ってしまうのです。それが、力みがある部位に皮膚刺激法を使うと瞬間的に力みが解消し、腕と体幹のつながりがでてきます。それだけでも腕の表現が変わります。

ダンスでは、この腕と体幹がつながった状態が美しい表現となりますが、空手では体幹の質量が腕に伝えやすくなるので突き(パンチ)の打撃力が高まります。

個人的に、ロルフィング®︎の個人セッションでダンスをされている方にもミットを叩いてもらう場合があるのですがそれは腕と体幹がつながった状態を打撃力で確認する為です。

③各部位の筋肉の活性化

皮膚刺激法を使うと脱力効果だけでなく、筋肉を活性化(促通)させて力を出しやすく効果があります。

この効果では手のひらがわかりやすいのですが手のひらを拳で数回「バシバシ」と叩くだけで手の握る力が強くなるのです。

これはビンの蓋を開ける際に、ビンが強く閉まっておりなかなか開けられない場合に手のひらをバシバシと叩いてから行うと呆気なく開けることができるようになります。

実際には筋力だけでなくその部位の巧緻能力(上手く使う能力)を高めている想像されます。

ちなみに、手や足の裏を叩くだけで手足と体幹とのつながりができます。上記で取り上げたダンスの腕の表現が手のひらを叩くだけでも同じように起こります。

④感知能力の向上

これも手のひらを叩く際にわかりやすいのですが、手で刺激に反応する能力が高まります。

練習会クラスや軸トレーニングWSの中で↓の動画のような対人ワークをよく行っています。

重力を感じて座る【身体の使い方】

これを行うには色々なポイントがあるのですが、1番簡単な方法がパートナーに触れられている部位(この動画だと肘のあたり)を刺激します。するとそれまで全くパートナーに抵抗されてしゃがめなかったのが、途端にしゃがみやすくなります。時には完全にパートナーが抵抗できないぐらい見事にしゃがめるようになるケースもあります。

これは肘の感知能力が高まりパートナーの反応を出しにくい身体の使い方になった為です。面白いのは逆にパートナーの手のひらを刺激します。すると、今度はパートナーの抵抗力が強くなり全くしゃがめなくなります。これはパートナーの手の感知能力が高まったのでしゃがむ動きを繊細に感じることができ適切に抵抗できるようになるからです。

一見こうした対人ワークはできると達人のように見られますが実際には相対的なものです。

行い手(しゃがむ側)と受け手(抵抗する側)の軸の力(素の身体の使い方)の強さによって結果が変わります。そうした観点では皮膚刺激法を使うと一時的に軸の力が向上するわけです。

基本的にはこうした対人ワークを受け慣れている人ほどかけやすくなります。特に先生と生徒という関係性があるほど感応現象が起こりやすく容易に生徒は崩されてしまいます。

ですが、その時にこの「皮膚刺激法」を使うと途端に全く崩せなくなる可能性があるのです。

ちなみに軸の力が圧倒的に強い方を相手にすると皮膚刺激法を行うと逆に更に容易に崩されてしまます(上の対人ワークだったらしゃがまれてしまう)。これは行い手の圧倒的な軸の力を繊細に感知してしまう為により繊細に感応してしまう為です。

実力が拮抗していれば「皮膚刺激法」は抵抗力を高めるのに有効ですが、圧倒的な実力差があると抵抗力がゼロに近い状態にされてしまいます。同じテクニックを使っても相手の能力によって全く逆の結果になるのは面白い現象だと思います。

合気道の稽古にこの「皮膚刺激法」を活用したらそれだけで上達率は著しく向上します。

実践方法

皮膚刺激法の使い方例は下記になります。

⚫︎手のひらを叩く
⚫︎足の裏を叩く、足を地面に数回バンバン踏みつける
⚫︎カカト落とし運動
⚫︎どこでもよいので叩く

手のひら、足の裏に刺激を与えるだけで筋肉はゆるみながら、力を強くします。また、手足と体幹のつながりを作ります。

学び事の練習前にウォーミングアップとして手のひら、足の裏を刺激するのはおススメです。

また、思いついた時に手のひらを数回叩くと自然に身体を改善していきます。

パートナーがいれば背中など自分ではなかなか触れられない部位を叩いてもらうのも一つの手段ですが、自分1人でも行える方法がカカト落とし運動です。

↓のような運動です。骨に刺激を与える目的で考案された運動ですが、下肢や背骨に皮膚刺激法と同様の刺激を与えることができます。

骨ホルモン(オステオカルシン)を出すかかと落としのやり方

地面にカカトを打ち付けた振動が背骨を伝って頭部まで軽く響かせることができればそれで大丈夫です。背骨周り、お腹周りのコアとよばれる筋肉が活性化します。

上の動画ではフローリングで行なっていますが個人的にはかなりの衝撃があるのでアスファルトの上で行うことをオススメします。

コツとしてはつま先立ちになり後は自然落下でカカトを地面に落とすだけです。強くカカトを叩きつけようと何か意図するよりも単にカカトを落とす意識で行った方がよく振動が響きます。

まとめ

「皮膚刺激法」はかなりシンプルで簡単な方法ですが効果は非常に高いです。

重要なことは刺激を与えるだけではその場だけの神経系の反応で終わってしまいます。当然これだけでは身体は変わりません。脳内の運動プログラムを変える必要があります。

そうした面でも練習に取り入れたり、ウォーキング・ランニングのウォーミングアップに活用することにより身体を良くした状態で身体を動かすことになるので脳内の運動プログラムがアップデートしやすくなります。

面白いのは相撲などを見ると取り組み前に気合いを入れる目的で身体をバンバンと叩くといった「皮膚刺激法」を使っている場面がよくあります。

「皮膚刺激法」の効果を確認すればまさに相撲にはうってつけのテクニックになります。相手と触れた部分の「感知能力」「筋力」「身体のつながり」が促通されるわけですから効果は抜群にあります。

但し、これがまた面白いもので人間は効果を認識していないと効果があったとしてもその効果は身につかないのです。

気合いを入れる目的で行ったら気合いが入るだけなのです。それ以外の効果は気付かずにスルーされて活用されません。

あくまでもテクニックは道具です。上手く扱えばいくらでも効果はでるし、下手に使ったら結果はでません。

適切に使って学び事の上達に活かしていただけたら幸せです。