「ロルフィング 効果なし」

はじめに

新しいWEBサイトを作成した際に久々に検索エンジンにて「ロルフィング」のキーワードで検索してみました。すると関連キーワードとして「ロルフィング 効果なし」がでてきます。通常のマッサージなどに比べてロルフィング®︎の単価は高い印象があるので受けて失敗しないようにこうしたキーワードで検索する方が多いのかもしれません。また、実際にロルフィング®︎を受けて「効果を実感しなかった」という感想を持たれる方はいると思います。

「ロルフィング®︎のたちばな」ではロルフィング®︎やセミナーに遠方から飛行機や新幹線などセッション料金よりも高い交通費をかけてさえも定期的に通って下さる方々が多くおられます。このような状況証拠からロルフィング®︎には何かしらの効果があると言えると思います。

そこで、ロルフィング®︎を仕事として行っているものとしてはロルフィング®︎は効果があるという前提で「効果がなかった」と感じる方のケースを考察してみようと思います。

大きく効果を実感しなかったケースは3つに分けられます。

①否定したい気持ちがあるケース

②変化があってもそれを感じることができないケース

③随時目的が変わっていくケース

①否定したい気持ちがあるケース

これは同じ業種の職業だったり、身体の使い方に関心がある方によくあるケースです。

仕事としてマッサージや他の手技をされている同業他者の方でかつ自身のメソッドのブランディングとして便宜的に勉強と称して受ける場合です。「効果はなかった」「自分の行なっている手技の方がよく効く」とブログやメルマガなどで宣伝する目的で受けるわけです。以前施術系の某メルマガで「ロルフィングを受けたけども大したことがなかった」というニュアンスで書かれていたのを実際に目にしたことがあります。また、これはロルフィング®︎に限ったことではなく様々な手技療法も対象とされています。このケースの場合、そもそも否定前提で受けているので良い効果があったとしてもバイアスが働いてその方にとっては存在しないことになりますし、そもそも存在してはいけないのです。

もちろん、意図的に否定する気持ち無く純粋に勉強として他の手技を受けることはあります。その際に重要なことは良い点・悪い点を客観的に見ようとする態度です。さらに具体的な評価方法があるとより客観性が高まります。「自分の行なっているテクニックが1番」「他者を否定したい」という欲求は無意識的にも持ってしまう傾向がありますので客観性を意識してもしすぎることはないでしょう。

また、仕事として行っていなくてもスポーツやダンス、武術などをされている方にも否定する意図を持って受けるケースがあります。このケースでは期待があるのだけど、胡散臭い・料金が高いという矛盾した心理が働いています。

実際に初めてロルフィング®︎を僕が受けた時にこの心理が働いていました。当時社会人になって学び始めたダンスを上達させたくてロルフィング®︎に関心を持ったのですが、そもそも施術で身体の状態や動作が変わるとはほとんど思っていなかったのです。ですが、当時思いつく限りの動作改善のトレーニングをし尽くしてしまっていたのでダメ元でロルフィング®︎に期待したのです。

その時、さしたる効果を感じなかった時の心理的な安全策として「ロルフィング®︎を高い料金を出して10回受けたけども効果は全くなかった、という話のネタとして使える」と考えて受けることを決めました。

結果的には1回目から劇的な変化を体感することができ、10回が終わる頃には軸がブレブレで全く回れなかったターンがキレと安定性を持ってできるようになり、当初のロルフィング®︎へ期待していた以上の内容を身につけることができました。これはダンスのターンなどの具体的な評価があったからより効果を実感しやすかったことが大きな要因だと思います。

現在「ロルフィング®︎のたちばな」で対人ワークを評価として活用しているのは身体や動作の変化をより客観的に知ってもらうのが大きな理由の一つです。

②変化があってもそれを感じることができないケース

このケースが比較的多いかもしれません。そして、このような感じる能力が未発達な方こそロルフィング®︎が必要であり有効なのも事実です。

以前ロルフィング®︎体験セッションを受けていただいたケースです。施術が終わって身体が適切に脱力できているように見えたので「どのような感じがしますか?」とご質問したところ「何も変わった感じがしない」とのこと。そこで片腕だけ徒手操作で更にゆるませました。すると的面に徒手操作を行った側の肩が「ダラ〜」と力が抜けて垂れ下がりました。これは誰が見ても違いがわかるレベルでした。そこで再度「今どんな感じですか?」と質問したのですが「何も変わった感じがしない」と同じ答えが返ってきました。つまりは身体を感じる能力が育っていないので身体の変化が明確に起こっていてもそれに気づくことが難しかったのです

実はロルフィング®︎のセッションを受けて行くと身体を感じる能力が少しづつ育っていく効果があります。個人差がありますがロルフィング®︎のコアのセッションの終わりである♯7ぐらいになるとほぼある一定の身体を感じる能力は開花してきます。言葉では開始当初同じ「変化はわかりません」と答えていても「肩の感じはどうですか?」というように身体の部位に意識を向けてもらうとはっきり「あ!違う!」と気づけるケースが増えていきます。

身体を感じる能力があれば身体が辛い理由を探索することができますが、能力が未発達の場合には辛い理由が明確にあるのに何故こんなにもしんどいのかがわかないという状態になります。漫画「ハンター×ハンター」にある描写が現実にも生じてしまうのです。

『極寒の地で全裸で凍えながらなぜつらいのかわかっていないようなもの』

漫画「ハンター×ハンター:第6巻」

③随時目的が変わっていくケース

このケースもよく目にします。当初は「腰の痛みを何とかしたい」という目的で来られていたのにセッションを重ねていくと腰は良くなったけども別のニーズにすり替わっていくケースです。元々のニーズが解決したことに意識が向いていればロルフィング®︎へのポジティブな評価になりますが、まだ解決できていないニーズに意識が向くと結果的にロルフィング®︎へのネガティブな評価が定着することとなります。

ロルフィング®︎のキャリアを重ねてわかってきたことですが身体が根本的に変わっていくと、必ず身体の状態はモノクロのような状態になっていきます。得意なところはとても快適だけども、不得意な部位は普通でありその快適と普通な部位の比較でモノクロのような感覚になるのです。なので、ある部位の問題が解決すると別の部位が気になりだします。このようにニーズが変わりやすいという傾向は明確にあります。

いきなり真っ白な状態(全く問題の無い状態)になることは論理的にありえないでしょう。特にロルフィング®︎により感覚が目覚めてくるとより薄い色の変化(少しの違い)にも敏感になっていきます。

ロルフィング®︎の受けるペースは「ロルフィング®︎のたちばな」では2週間〜4週間に一度のペースをオススメしていますが、特に4週間に1度だと身体のモノクロ化によってニーズが変わっていくことにご本人が気がつかない可能性が高くなる傾向はあります。この身体のモノクロ化がわかっていくとまだ未発達な部分へ対策がとれますからどんどん身体を改善させることが可能ですのニーズが変わることは悪いことではありません。問題は、どのような身体の過程をたどって今に至っているのかを認識しておくことです。

対策としては身体の痛みや調子を数字で評価したりメモしておく習慣をつけることが助けになるかもしれません。

ボディワークは主観性が強い

ロルフィング®︎をはじめとしたボディワークという分野は非常に主観性が強い傾向があります。これはある意味良い特徴ではありますが、客観性が乏しいというマイナス面もあります。

今回の記事では「ロルフィング®︎の効果を感じないケース」に焦点を絞りましたが、逆に過大な評価をする場合もあるのです。それほど身体自体は変わっていないけども感覚変化が大きいので誤解してしまう。ロルフィング®︎ではセッション前後の姿勢の写真を撮影して評価に使うことがありますがこれも主観性が拭えません。身体の本質が見えてくるとよくわかるのですが前後の写真で本質的な変化が全く起きていない(身体の形が変わっただけで重心の位置が変わっておらず、軸が通っていない)のに変化が起こっていると判断しているロルファーも多くいます。

ですがこれだと本当の意味での身体本来の状態にはたどり着けません。さらに「ロルフィング®︎のたちばな」が追求しているスポーツ、ダンス、武術の分野にも十分以上通用するようなロルフィング®︎にすることは難しいでしょう。

大切なことはそのセッションや期間で起こった身体や動作の変化の客観的な評価することです。実際の話、数字でこうした身体の状態や動作の質を評価すること自体が難しいのですが少しでも客観性を保つ為に「ロルフィング®︎のたちばな」では対人でのワークで確認するようにしています。

近年では測定機械の安価化が進んでいるので良い測定機械が見つかったら導入していこうと思います。

主観性と客観性どちらも大切です。