はじめに
武道・武術には「居着き」という言葉があります。
「居着き」という用語には使用する各個人で色々な意味合いがあると思われますが個人的には、
移動する際に身体重心を“支持基底面”上に留まらせる無意識の神経生理学的な反応
と考えています。
簡単に言うと移動したいのに身体はその場に留まろうとする無意識の反応のことです。
居着きが解消してから、居着いていた状態を思い返すとまさに「その場に縛り付けられている」ような感覚です。
この「居着き」がある状態では前に進もうとしているのに身体は元居た場所に無意識的に留まろうとします。この反応は前に移動する際のブレーキになるので、アクセルを踏みながらブレーキも踏んでいる状態になってしまい非効率な状態です。
支持基底面とは?
支持基底面とは、上のイラストの赤い枠のことです。
簡単に言えばこの枠の上に重心があれば安定して立っていられます。そして、1mmでも枠から重心が外れた場合に身体は傾いていき足を踏み出すなどの対応をしない限りはいずれは倒れてしまうことになります。
その場でバランスをとる
その場でバランスをとる際には支持基底面の上に身体重心を維持させる為に▲のイラストのような戦略がとられます。
このような反応はその場でバランスをとる為には有効に働きますがその場から移動しようとする際にも同様の反応が起こることが「居着き」「居着いた状態」になります。
なので「居着き」の反応自体は人間が立位で生活をする上で必須の能力です。
問題なのは、必要のない場面でもこの反応がでてしまい結果として非効率な動作の原因となってしまう点です。
居着きの反応
▼の動画は典型的な居着きの反応がわかりやすくでています。
ちなみにこの動画は重心と支持基底面の説明をしているので「居着き」の反応がでるのは自然なことです。典型的な2つの「居着き」の反応がわかりやすかったのでここで使用させていただいています。
居着きの反応①:腰が残る
上半身を引かれていますが骨盤(▼画像の黄色丸部分)はその場に残ろうとしています。実際にはオレンジ矢印の方向へ骨盤を移動させることによりバランスをとっています。
この骨盤が後方へ移動させてその場に留まろうとする反応が典型的な居着きの反応です。
居着きの反応②:指の付け根で耐える
上半身が引かれるのを指の付け根の一点(▼足裏の画像の赤丸部分)で耐える反応です。
指の付け根の一点で身体を支えることにより重心が上に持ち上がってしまいます(▼オレンジ矢印)。その場に留まる為には非常に有効な反応ですが、もし前方移動する場合にこの反応が起こると、前方移動による運動量(質量×速度)が低下してしまいます。
武道・武術では「地面を蹴るな」という教えがありますが、この足裏の一点で身体を支えた状態を指していると思われます。
この足裏の一点で身体を支える「居着き」も一般的なものです。
実際には▼画像の緑矢印のように重心(厳密には身体を支えている支持点)は元々あった位置から指先へ一定の速度でスムーズに移動させることが求められます。ある足裏の一点だけ多く留まろうとするのが居着きの反応です。
終わりに
「居着き」の反応自体は人間がその場で立ち続ける為に必要な反応です。
但し、それが身体の移動を伴う様々な場面で無意図的に反応がでてしまいパフォーマンスにマイナスに働いてしまうのが問題なのです。
この居着きを少しでも解消することにより、
⚫︎走るのが速くなる
⚫︎走りの持久力がつく
⚫︎突きの威力が高まる
⚫︎蹴りの威力が高まる
⚫︎相手に感知されずらい動きになる
⚫︎身体の力みが消える
⚫︎施術で受け手の筋肉がゆるみやすくなる
などの現象が現れます。
スポーツやダンス、武道を上達させたい場合にはまずこの「居着き」を解消することが1番の近道です。
個人的にはパフォーマンス向上に1番重要だと考えていますが「居着き」は気がつきにくいのです。
居着きの無い人(トップアスリート・ダンサーなど)、居着いている人(一般人)ともに居着きの反応がある・無しの状態は日常的なことなので気付けません。気づく可能性が高いのは居着いている状態をトレーニングなどの取り組みによって意図的に克服した人です。
そして、「居着き」の概念が知られていない現状では、意図的に克服した人はかなり少数です。
少なくともスポーツ科学の世界ではまだ「居着き」は認識されていません。認識されていなければ当然研究対象にはならないので「居着き」の知見も積み重なっていきません。
おそらくあと50年もすれば当たり前の世の中になっていると思われますが、個人的にはこの期間をできるだけ短縮させたいと考えています。
「ロルフィング®︎のたちばな」ではロルフィング®︎とムーブメント・エクササイズを組み合わせることによって効率的にこの「居着き」を解消できるようになりました。
居着き解消にご興味ある方は是非ご相談下さい。