手が勝手にくっついてくる現象

はじめに

大東流合気柔術の技術の中に「触れ合気」というものがあります。

岡本正剛氏の手のひら同士をくっつけて技をかけるのが有名だと思います。僕もビデオで存在を知りました。

20年前合気道を稽古していた時にもこの「触れ合気」を見様見真似で行なってみたことがありますが、当然なんの反応も起こせませんでした。

それが先月合気道の「座技呼吸法」をテーマとして色々と身体操作を探求していったところ不完全ながらこうした原初的な「触れ合気」の反応が出せるようになってきました。

相手に手の平を上にしてもらいこちらが手の平を乗せてさらっと相手の指先に向けてさすると、相手の神経生理学的な反応によってこちらの手にくっついてついてくるというものです。

ロルフィング®︎の個人セッションで試してみるとクライアントさんもできてしまいました。

段階的にすすめる

こうした「触れ合気」を身につける方法論は色々あると思いますが僕が取り組んでいるやり方は簡単なものから徐々に段階的に難易度を高めていくというやり方になります。

段階を簡単に説明すると、

①合掌トレーニングで前腕の「橈骨」「尺骨」を開発する。
②座技呼吸法で相手の親指の皮膚をこちらの「橈骨」で操作する。
③座技呼吸法で相手の親指以外の4指をこちらの「尺骨」で操作する。
④座技呼吸法で相手の手の平をこちらの手の甲で操作する。
⑤相手の前腕をこちらの前腕で操作する(推手のような形)。
⑥相手と正面で手の平同士をくっつけた状態で相手の手の平を操作する。
⑦相手の手の平にこちらの手を乗せて操作する。
❽相手の手の平をこちらの手でさすって操作する。

このような形です。

▼前腕の骨(橈骨・尺骨)は画像を参照にして下さい。

段階的に行っていけば原初的な「触れ合気」は誰もが確実に習得できる現象です。

1番重要なことは①の前腕(橈骨・尺骨)の開発です。

前腕(橈骨・尺骨)の開発が進み指先と前腕のつながりが強くなれば自然に「触れ合気」現象は行うことができます。

但し、前腕(橈骨・尺骨)の開発が適切にできているかを確認するのに上の段階的な取り組みが役立ちます。

なので前腕(橈骨・尺骨)の開発と上の段階的な取り組みは組み合わせて行うことが効率的な方法になりますね。

ちなみに、気功のトレーニングや合気系のDVDには段階⑥の手の平同士をくっつける取り組みが行われていたり、紹介されています。また、ロルフィング®︎のメソッドであるロルフ・ムーブメントのWSでも紹介されていました。

ですが「段階⑥」と指摘しているようにいきなり、このようなワークを行って身につけるには難易度が高すぎます。

こうした難易度の高いものから取り組みが始まると限られた少数しか身につけることができませんし、時間も大幅に必要とされます。

なので難易度の低いものから1段階づつ難易度を高める方法を個人的にはオススメします。

この段階的な取り組みを開発するのが専門家の仕事なのでなかなかできないのですが、、、。

メカニズム

結局は相手との接触によって如何に相手の防御反応を起こさせないかが重要になります。

防御反応がでてしまうとその場で固まってしまい、こちらの手についてきてはくれません。

感覚が身につけてくればどのようなやり方でもできるとは思いますが、やりやすい方法は前腕の橈骨を利用した回内や尺骨を利用した回外の動きを活用することです。

橈骨・尺骨を活用して指先を使うことにより相手の手の平に防御反応が起こりにくくなります。

防御反応が起こらなければ人間に備わっている▼のような握る原始的な反射によって意図せずに手が勝手についてきてしまうという現象が起こるのではと考えています。

科学的な研究対象となればこの辺りは明確にわかってくると思います。

個人的体験

当初は橈骨主体の動きだとこの「触れ合気」現象を引き出すことができましたが、尺骨主体の動きでは全く反応しませんでした。

それで尺骨のトレーニングを考案して尺骨をより使える状態にしてみるとできてしまいました。

前腕の2つの骨である橈骨・尺骨が実際に使えているかどうかを確認する為にもこうした「触れ合気」は役立ちますね。

誰でもかかるものではない

ちなみにこうした「触れ合気」は誰でもかかるものではないと知っておくことは重要です。あくまでも相手の神経生理学的な反応を利用したものなので受け手によっては誰が行なっても反応が起こらないケースがあります。

また逆に非常にかけられやすい人も存在します。僕なんかは非常にかかりやすいです。

こうした観点から武道・武術としての技としては稽古する意味はありますが、実際の闘争では全く使える類のものではありませんし、「触れ合気」がかからないことが身体の開発が進んでいるわけでもないと把握することは重要です。

但し、身体の開発を進めたりや開発度合いを確認するのには非常によい取り組みになります。

終わりに

こうした「触れ合気」現象は合気柔術や合気道などの武道だけでなく、施術や社交ダンスのようなペアダンス、道具を活用したスポーツなどに大いに役立ちます。

そうです。人とつながれるということは無機物である道具ともつながりができるということです。

合気柔術や合気道はもともと剣術から派生したとされていますから本来の目的は人ではなく刀とつながりを作る為の稽古体系だったかもしれません。そう考えると色々と面白いですね。

個人的にはこうした取り組みを行うと指先と前腕のつながりが明確に強くなる点が1番の関心ごとです。

「ロルフィング®︎のたちばな」ではスポーツやダンスにも十分通用するロルフィング®︎を模索しています。

指先と前腕のつながりができてくるとそれだけで軸が通るのでジャンル問わずスポーツ、ダンスが上達しやすくなります。

当然、軸が通るということは身体の歪みや姿勢が整うということでもあります。

結局はロルフィング®︎の精度を高めることにつながっていますので、今後もこうした探求を継続していきます☆