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「体幹」と「末端」を起点とした動きの具体的な例

はじめに

3月に「体幹主導末端操作」と「末端主導体幹操作」の2つの動作パターンについての気づきがありました。

体幹主導末端操作」については書籍「黒人リズム感の秘密」の著者であるトニーティ(七類 誠一郎)先生開発のインターロック・エクササイズをトレーニングしていたことから認識として持っており、「末端主導体幹操作」については師事している先生から習っていました。

この2つの観点はありましたがどちらが正しいのかずっと悩んで来ました。

それが両方とも正しく、動作パターンの違いということがはっきりと認識できたのが今年の3月でした。

この認識ができてから色々な面白い発見があるのですがこの2つの動作パターンを説明することはかなり難しいということもわかってきました。

体幹主導末端操作」は体幹(頭部・四肢を除いた部分)を起点とした動作パターンであり、「末端主導体幹操作」とは末端(頭部・四肢)を起点とした動作パターンなのですが、この「起点とした動作」という感覚を顕在的に持っていないとこの違いを認識することが難しいようです。

今回は「起点とした動作」というものがどういうことなのかを具体的な例を上げてニュアンスだけでも伝えられたらと思います。

「体幹」と「末端」を起点とした動き

体幹を起点とした動き(体幹主導末端操作)

⚫︎体幹を起点にして結果的に末端(手足)をコントロールする動作パターン。
⚫︎体幹の運動量(質量×速度)を最大限に活用できるので威力や速度が必要な場面で有利。
⚫︎体幹でリズムを取りやすく連続的な動作に有利。
⚫︎予備動作がある。
⚫︎動作や身体が全体的に柔らかい印象になる。
⚫︎黒人文化では顕著な動作パターン

末端を起点とした動き(末端主導体幹操作)

⚫︎末端(手足)を起点にして結果的に体幹をコントロールする動作パターン
⚫︎末端の動きに引きづられるように体幹の運動量が使えるので、一見小手先の動きに見えて思っている以上のパワーを発揮できる。
⚫︎咄嗟の鋭い動作をするのに有利。
⚫︎予備動作が無い
⚫︎身体や動作が全体的に静かで鋭い印象になる
⚫︎日本文化で顕著な動作パターン

この動作パターンには「個人の身体の使い方」と言う見方とスポーツ、ダンス、武術などの「競技特性」としての見方の2つあります。

例えば、ストリートダンスは体幹主導末端操作優位の競技(種目)ですが、それを行う個人では末端主導体幹操作に近い身体使いで行うことも可能ということです。

当然、動作パターンが不一致な場合には不利になる傾向があります。

ですが末端主導体幹操作とともに体幹主導末端操作も身につけ自由に扱えるならそれまでになかった表現になる可能性が高くなります。

各部位を起点とする感覚

「体幹」もしくは「末端」を起点にして動く感覚と動かそうとする部位の意識とは微妙に異なります。

「体幹主導末端操作」でも手を意識して動くことは可能です。そして、その際に意識する・しないに関わらず体幹を起点とした動きになるということです。この場合、手を動かそうと意図した瞬間に脳がその動きを予測して体幹から動く準備をしてから動きが始まるということになります。

「末端主導体幹操作」優位の動作パターンをしている場合は体幹を直接動かすという発想はかなり薄いと思われます。ですが、質の高い身体の使い方ができれば体幹は自然と大きく動くことも可能です。

ちなみにこの「体幹が動く」ということは「その場からの移動」も含まれます。その為、末端主導体幹操作の場合移動を伴った動作になることが多い傾向があります。

一般的には「体幹主導末端操作」か「末端主導体幹操作」のどちらか一方を優位に使うケースが多いので、“体幹起点の動き”“末端起点の動き”を明確に認識しているケースはかなり少数だと思われます。

評価方法

「体幹主導末端操作(体幹を起点とした動き)」と「末端主導体幹操作(末端を起点とした動き)」ができない場合、体幹起点・末端起点で動く感覚を感じることは論理的にあり得ません。

そこで簡単に確認できる方法をご紹介したいと思います。実際に行ってみてどの程度できるか確認しみましょう。

▼体幹主導末端操作の評価

この態勢だと非常に簡単なのでできれば立位で行って下さい。受け(動画では真ん中の人)は真剣に抵抗します。

もしくは、受け手に肩を抑えてもらい体幹の動きで受け手を押す方がわかりやすいかもしれません。

▼末端主導体幹操作の評価

動画の1つ目の受け手の身体全体に衝撃が行く「突き」が打てれば十分です。末端(手)に引きづられるように重心が移動することによる運動量(質量×速度)が伝われば、動画よりも軽く突いても受け手の身体全体が震える程度の「突き」になります。

通常の「突き」だと▼のようになります。

表面で衝撃力が散ってしまっています。

この2つの評価ができれば最低限の「体幹主導末端操作」「末端主導体幹操作」ができていると言えると思います。

ちなみにこの2つの評価を練習してできるようになっても体幹起点の動き感覚、末端起点の動き感覚は感じることは難しいと思われます。

あくまでも日常の身体の使い方の中で2つの動作パターンの使い分けができることが起点感覚だからです。

状況設定の練習で身につけてもそれ以外の状況ではなかなかその動きにはなりません。

ダンスの動きで行うと体幹主導末端操作ができる

先日、面白いケースがありました。

ロルフィング®︎の個人セッションにて上記の体幹主導末端操作系の評価を行ったところ、はじめはかなり苦戦されていたクライアントさんが、フラダンスの動きをすると途端にできてしまったのです(フラダンスは体幹主導末端操作優位の種目です)。

つまり、このクライアントさんはフラダンスを練習している際には「体幹主導末端操作」の動きができているということです。

でもそれはあくまでもフラダンスをしている最中に限定されたものということになります。

なので、日常的な身体の使い方で評価をするとできず、フラダンスを行なっている時のモードで行うとできたのです。

ちなみに、ここから先の取り組みによってその後の上達度が変わっていきます。

それは今後もこうした「体幹主導末端操作」の評価をする際にフラダンスのモードで行うのか、体幹主導末端操作トレーニングを行い日常から体幹主導末端操作の動作パターンを身につけるかです。

当然、後者の方が汎用性が高くなります。

前者だと毎回フラダンスのモードになったり、フラダンスの動きをしなければいけませんが、後者ならいついかなる時にもどのような動きでも当たり前のように「体幹主導末端操作」ができるようになるからです。

こうしたことが僕が状況設定の練習ではなく「素の身体の使い方(日常の身体の使い方)」を重視する理由です。

体幹主導末端操作系

体幹主導末端操作系の動作の例を列挙していきます。

例①

体幹の動きに手足がついて動いているのがわかりやすいですね。

例②

体幹のお化けです。

例③

体幹の屈曲・伸展の動きで膝(大腿部)をコントロールしているのがわかりやすいと思います。

例④

ボクシングは体幹主導末端操作の傾向があると思われます。下でご紹介する例❸の武術的な突きと比較するとその違いが明確になると思います。

例⑤

Twitterにて異論が投げかけられたこのバッティングスタイルですが完全に体幹主導末端操作系だと個人的には考えます。体幹起点の動き感覚があると、この例に関しても議論の余地はないと思うのですがどうでしょうか。

「膝が先に動いているから末端主導だ」という意見がありましたがこれは上の例③での体幹の側屈バージョンです。体幹側屈の動きによって膝をコントロールしています。

また、体幹の側屈でタメを作りスイングに入りますがこれは体幹起点の反動動作があることによって体幹の移動による運動量(質量×速度)を効率的に使えるのです(肋骨の振り子化)。

これが単に体幹を意図的に側屈させた動き(形だけの変形)だとその運動量(質量×速度)が使えません(体幹主導末端操作の評価ができないことを意味します)。

末端主導体幹操作系

次は末端主導体幹操作系の動作の例を列挙していきます。

例❶

この動画では「末端主導体幹操作」の基本原理をわかりやすく説明されています。「末端主導体幹操作」に興味ある方はこの動画を繰り返し見ることをおススメします。

例❷

阿波踊りです。男踊り、女踊り共にわかりやすい末端主導体幹操作系の動きですね。

例❸

典型的な末端主導体幹操作の動きです。例④のボクシングのパンチと比較するとその違いがわかりやすいのではないかと思います。一見威力が無いような印象がありますが重心移動による運動量(質量×速度)が伝わるのでかなりの威力があります。この突きの本質は「体当たり」です。

例❹

まず↑の動画の解説を聞いてから↓の動画を見るとそのメカニズムがわかりやすいと思われます。↑の動画の蹴り方をすると誰でも自然と「末端主導体幹操作」の動作パターンになります。

↓は少し難易度が上がるやり方です。これも一見それほど威力があるようには見えませんが大腿部から足先にかけての運動量(質量×速度)が伝わるのでかなりの衝撃力があります。

上記のような蹴りでの「末端主導体幹操作」が自由に使えると↓の蹴り(相手のスネを蹴る)を行えばこれだけで相手を吹っ飛ばすことが可能です。ですがかなり危険なので実際には使わないことをおススメします。

例❺

当初はこれを「体幹主導末端操作」だと捉えており見方が間違っていました(^^;;

これは一見体幹のウェーブを使っているので「体幹主導末端操作」に思えます。でも、これは「末端主導体幹操作」だと個人的には考えます。根拠としては膝の抜きを使っての重心移動を起点にしているからです。

僕も似たようなことを行なったりしますが、それは骨盤起点であり異なる身体の使い方だと気がつきました。

まとめ

今回は「体幹主導末端操作」「末端主導体幹操作」の例を多くご紹介しました。

実際には競技特性として動作パターンの2つが混合されていたりと白黒はっきりつけることは難しい例もあるかと思います。

但し、こうした動作パターンの競技特性がわかると非常に上達がしやすくなります。

バッティングに関してですが高校時代から俗に言うところのメジャー式(体幹主導末端操作系:例⑤)のスタイルに関心を持ち身につけようとしましたがどうしても重心がピッチャー方向に移動してしまい上手くいきませんでした(末端主導系の傾向があった)。

大学時代に身体操作系のトレーニングを積んで体幹が少し動くようになってもこのピッチャー方向に重心が移動する癖が直りませんでした。

それがインターロック・エクササイズによって体幹連動(体幹主導末端操作)が出来始めた途端にあれだけピッチャー方向に重心が移動していた癖が無くなり、メジャー式のバッティングでのスイングができるようになったのです。

高校を卒業してからこの間、野球の練習は一切していません。

当初は不思議だと思っていましたがインターロック・エクササイズの成果だと漠然と考えていました。それが、今では一歩認識が進んで「体幹主導末端操作」と「末端主導体幹操作」の動作パターンの違いが原因だったのではと考えています。

もちろん「体幹主導末端操作」「末端主導体幹操作」で全ての身体運動が説明できるとは考えていません。例❺で取り上げたように間違いもでてくるかもしれません。但し、この2つの動作パターンを探求するメリットは限りなくあると考えています。

日本の武術の技は一見不可思議な部分がありますが「末端主導体幹操作」の観点で分析すると解明できてしまうことが増えています。

まだまだ未完成な理論(考え方)なので異論反論は多々あるかと思いますが、そうした場合には論理的で建設的な議論ができたらと考えています。

特にこうした身体動作の分野は科学的な研究がかなり遅れている分野です。実際に研究対象にはほとんどされておりません。

どうしても科学の素人が考える理論です。そこには主観性という穴が多々あるかと思います。

ですが、誰かがこうした分野を開拓していかなければ科学の研究対象になるのがどんどん遅れていきます。

多少の間違いがあるというリスクを背負ってでも個人的には今後もこうした身体動作の分野を探求していきたいと思います。

間違いがあったら優しくご指摘下さい(^^;;

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