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「体幹を起点とした動き」と「末端を起点とした動き」の違い

はじめに

動作パターン(主導操作系)はその国の文化やスポーツやダンス独自の競技特性によって特徴があります。

この動作パターンは大きく分けて2つに分けられます。

体幹を起点とした動きである「体幹主導末端操作」末端を起点とした動きである「末端主導体幹操作」です。

この2つにはそれぞれ特徴がありますが優劣はありません(ここが重要)

今回は具体的な例をだしてこの「体幹主導末端操作」「末端主導体幹操作」を説明したいと思います。

1度だけではわかりずらいこともあるかと思いますがその場合には動画を繰り返し見ることをオススメします。また、Twitterのツイートには元のYouTubeへのリンクをつけているのでそちらもご参考にどうぞ。

主導操作系

体幹主導末端操作

⚫︎体幹を起点にして結果的に末端(手足)をコントロールする動作パターン。
⚫︎体幹の運動量(質量×速度)を最大限に活用できるので威力や速度が必要な場面で有利。
⚫︎体幹でリズムを取りやすく連続的な動作に有利。
⚫︎予備動作がある。
⚫︎動作や身体が全体的に柔らかい印象になる。
⚫︎黒人文化では顕著な動作パターン

↓典型的な「体幹主導末端操作」の動作パターン。向かって左側の人物の左脚の動きを見るとわかりやすい。体幹の動きに引きづられるように結果的に脚(大腿骨)を動かしている。

末端主導体幹操作

⚫︎末端(手足)を起点にして結果的に体幹をコントロールする動作パターン
⚫︎末端の動きに引きづられるように体幹の運動量が使えるので、一見小手先の動きに見えて思っている以上のパワーを発揮できる。
⚫︎咄嗟の鋭い動作をするのに有利。
⚫︎予備動作が無い
⚫︎身体や動作が全体的に静かで鋭い印象になる
⚫︎日本文化で顕著な動作パターン

↓典型的な「末端主導体幹操作」の動作パターン。拳に引きづられるように体幹(身体全体)が移動している動き。一見手打ちで威力が無さそうに見えるけども、実際には全身の運動量(質量×速度)が伝わり浸透する突きになっている。そして、反応しづらい。

実際には100%「体幹主導末端操作」「末端主導体幹操作」の動きというのは稀でスポーツやダンスではこの2つが組み合わさって成り立つ。「体幹主導末端操作」が優位なジャンル、「末端主導体幹操作」が優位なジャンル、どちらでも活用できる「混合型」のジャンルがある。

この動作パターン(主導操作系)の特徴がわかると効率的に技術練習やトレーニングを考案・実施できる。

逆に動作パターン(主導操作系)を把握していないと間違った指導がなされてパフォーマンスが低下する可能性もでてくる。

主導操作系の印象の違い

体幹主導末端操作系

アイドルグループ「フィロソフィーのダンス」の日向 ハル(ひなた はる)さんの動きが非常にわかりやすいと思います。

日向ハルさんはオレンジ色の服の方です。

全体的に柔らかい表現で、首を傾げる動きも脊柱を起点にして結果的に頭部を傾げています。グルーヴ(音に乗る)しているのが非常にわかりやすいですね。

末端主導体幹操作系

アイドルグループ「ばってん少女隊」の希山 愛(きやま あい)さんの動きは完全に末端主導体幹操作です。

体幹主導末端操作系のダンスを踊る人は多くいますが、このレベルで「末端主導体幹操作」系の動作パターンで踊る人は見たことがまだありません。

動画は「ますとばい」の振り付けビデオからです。

希山愛さんは緑のズボン。

日向ハルさんの表現に比べると体幹はそれほど柔らかい印象はありません。動き全般的に突然手足がでてくるような印象があります。なので動きが読みづらい。

希山愛さんはLive中に髪飾りがとれてしまうことが多いのですがこれは頭部を起点としてその動きを体幹が邪魔せずにしなる動きになるので、頭部の動きのキレがすごいことがその要因の1つです。しなりによって髪飾りが吹っ飛んでしまうのです。

先日のばってん少女隊のZeppツアーのある公演では髪飾りを3回ほどダンス中に吹き飛ばしていました。

ゾーンに入ったであろう希山愛さんのパフォーマンスはもうキレキレかつ、その場から動いてい無いのにも関わらず見失ってしまうほどなのですが、その場面の動画がないのでご紹介できないのが残念です。

実はこの「フィロソフィーのダンス」と「ばってん少女隊」のライブを昨年の夏に同時に観覧する機会がありました。

アイドルのフェスで「ばってん少女隊」を見に行った際に、その前に「フィロソフィーのダンス」がライブをしていたのです。

フィロソフィーのダンス」の日向ハルさんのダンスや歌のパフォーマンスの高さにびっくりしました。全く事前情報がなかったのにダンスと歌で自然に乗れてしまいました。

その後のばってん少女隊のライブで自然に日向ハルさんと希山愛さんを比較することになるのですが、動作パターンが正反対で非常に興味深かったです。

腕の表現の違い

体幹主導末端主導系(あおり動作有り)

ロックダンスのポイントと呼ばれるムーブです。ストリートダンス自体が体幹主導末端操作優位のジャンルなので体幹を起点として腕を操作しているのが非常にわかりやすいと思います。

このお二人はHilty&Boschというロックダンスのトップクラスのダンサーです。

僕がダンスを学んでいた当時は「パワーロック」と呼ばれるほどスピードやキレを重視しているスタイルでした。

意図的に肘の“あおり動作”が入るので一見スピードがあるのですが動きが見やすい(読みやすい)傾向があります。この“あおり動作”はダンスとしては必須の要素です。これがないとロックダンスにはなりません。そしてこの“あおり動作”は体幹を起点として行われています。

体幹の動きを利用して肘を引き上げてから、肘から先を解放する。

末端主導体幹操作系(あおり動作無し)

下の動画は、希山愛さんの「のびしろ行進曲」でのソロの振付です。ロックダンスで言うところのドラムというムーブです。

ポイントとドラムなのでムーブが異なりますがそれでもHilty&Boschのお二人との印象の違いがわかりやすいと思います。

向かって左→右→左と3連続のドラムを行なっています。

肘の“あおり動作”が無いので突然突かれる印象になるのです。

ここで「突かれる」と表現しました。

ドラムとは「太鼓(ドラム)を叩く」ような動作なのでドラムという名前がついたと個人的には理解しています(ストリートダンス自体はまだ歴史が浅いので人や時代によって呼び名は変わっていると思われます。統一された用語ができるのはもう少し時間がかかるでしょう)。

Hilty&Boschのドラムはまさに「叩く」という表現が適切です(DVDを見たりや実際にレッスンを受けて生のムーブを見たことがあります)。

でも希山愛さんのドラムは空手などの「突く」と言った表現が適切でしょう。

“鋭く”そして“早い”のです。

これはまさに「末端主導体幹操作」系の特徴です。

野球のバッティング

体幹主導末端操作系(メジャー式バッティング)

アメリカメジャーリーグの選手は現在ほぼ「体幹主導末端操作」系だと思われます。

①構え
②キャチャー側の肋骨を開き、ピッチャー側を閉じる動き(体幹起点の動作)
③肋骨を振り子のようにして重心移動をしながらバットを解放

Twitterでアメリカのバッティング練習のシーンが流れてくることがありますが、その中にはステップをせずに体幹の動きだけでボールを打っているものがありますから、この肋骨や体幹の動きは意図的に行なっているようです。

なかには、一見肘を起点しているように見えるフォームの選手もいますがよく見ると体幹起点だったりします。

体幹主導末端操作だからといって、大きく体幹が動くわけではないという点は分析する上で重要なポイントです。

ダンスでも同じですが体幹の動きは熟練度とともに見えずらくなっていきます。

末端主導体幹操作系(日本式バッティング)

①構え
②手、膝から動く(末端起点の動作)
③身体全体での重心移動
④重心移動を急停止させてバットを解放

このように比較すると「体幹主導末端操作」と「末端主導体幹操作」では運動構造がまるで異なるということがよくわかると思います。

実際には「体幹主導末端操作」と「末端主導体幹操作」をミックスした混合型も見受けられます。

戦前のアメリカのバッティングスタイルは、現在のスタイルに近い「体幹主導末端操作」系の選手がいる一方、ベーブルースのような「末端主導体幹操作」系の動きの選手もいるのは興味深いです。

↓ベーブルースのバッティング

「体幹主導末端操作」「末端主導体幹操作」両方のバッティングスタイルが伝わり、日本人の身体動作文化として行い易い「末端主導体幹操作」を選択したのか、それとも「体幹主導末端操作」のスタイルを独自にアレンジして日本式バッティングスタイルを構築したのかどちらにしても文化的に面白いです。

咄嗟のプレイ

「体幹主導末端操作」は一定の時間の猶予がある場合に行い易い特徴があります。

野球のバッティングやピッチングではピッチャーから投げられたボールはゼロコンマ数秒という短時間でキャッチャーに届きますがピッチャーはこれから投げるという予備動作が必ずありますからその一定の時間で準備が行えます。

これが咄嗟的にプレイをしなければいけない状況になっていくと自然と「末端主導体幹操作」系の技術が発達していきます

例えば、同じ野球という競技でも守備で片膝がついたり、態勢が崩れた場面では手先で投げることが要求されます。

↓このような場面では体幹を起点とするとその予備動作の分遅れてしまうので、強いボールを投げられたとしてもアウトにすることは難しくなります。

重心を十分に投げる方向に移動させることが難しいので自然と「末端主導体幹操作」系の動作パターンになるわけです。

↓例え、片膝をついていても時間的な制約がなければ予備動作を十分に行え、重心移動も適切に行えます。

この2つの動画は一見同じように見えますが重心や体幹の使い方は異なるように個人的には見えます。

テニスのようなスポーツではこの傾向が顕著になるようですね。

体幹を使った予備動作が大きいと相手から返ってきたボールに対応することが難しくなりますから、咄嗟の反応が要求される競技でははじめは「体幹主導末端操作」の傾向があっても競技レベルが上がると自然と「末端主導体幹操作」系の動作パターンになっていくことは自然な流れだと思います。

まとめ

今回は、動作パターンである「体幹主導末端操作」「末端主導体幹操作」の具体的な例をあげてみました。

大抵は白黒とつけられるケースは稀です。通常のスポーツでもダンスでも混合型が一般的かと思われます。

そして、どちらの動作パターンでも重要なことは体幹も末端も両方使えるということ

これは勝手な個人的な仮説なのですが戦後の日本人の動作パターンは「末端主導体幹操作」の傾向がありながら、アメリカ文化の「体幹主導末端操作」の影響を多分に受けておりかなり混乱した状態だと考えられます。さらに問題なことは体幹も末端も両方とも使えていないということ。

体幹でも、末端でもどちらかが使えればそれに引きづられるようにもう一方の開発も進みます。

それが現在の日本では限られた一部の人を除いて、どちらの開発もできていないので運動能力が低下傾向にあるように思うのです。

先日の軸トレーニングWS「脊柱リンク」では「体幹主導末端操作」系のトレーニング方法をご紹介しましたが、たった2講座で劇的に参加された方の身体は変わってしまいました。

次の軸トレーニングWSでは「末端主導体幹操作」系のトレーニングがテーマとなると思いますが、この2つの動作パターンを理解して、身につけるだけでスポーツやダンスなどの上達は早くなると思われます。

↓主導操作系の2つの動作パターンに関してはこちらの記事もご参考になさって下さい。


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