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「末端主導体幹操作」と「体幹主導末端操作」

はじめに

身体運用を改善させる為に「肩甲骨を立てる(立甲)」「骨盤分割」「脊柱の細分化」などの身体の動きを開発するトレーニング方法が世の中に多く登場しています。

でも意外とトレーニングして身体が細かく動けるようになったのにそれほどスポーツやダンスのパフォーマンスに影響しないことが多いのではないでしょうか?

身体の使い方のパターンとして「末端主導体幹操作」と「体幹主導末端操作」があります。この2つの動作パターンを理解することにより、スポーツやダンス、武道などの各ジャンルの特徴が分析できるようになり、またトレーニングしてきた身体運用を具体的な技術に応用することができるようになります。

僕自身、この2つの動作パターンを明確に理解できたのは最近のことですが、この2つを意識することにより身体の開発が一気に進みました。

今回はこの2つの動作パターンについて説明します。

末端主導体幹操作とは?

「末端主導体幹操作」という用語は師事している先生が考えられた造語です。

動作の起点を手や足に起き、その末端部の動きを制限させない体幹の使い方のこと。また、末端の動きに誘導される形で結果的に体幹部を操作すること。

武道・武術でよく見られる動作パターンです。文章だけでは分かりにくいので下記のツイートの動画をご覧ください。

手(末端部)をひっぱることで体幹部がその動きに抵抗することなくついていくような動作パターンでこの動画は非常に「末端主導体幹操作」がわかりやすいです。

大抵は手の動きに対して体幹部が抵抗して引っ張り合う関係性になる傾向があります。そうなると末端と体幹の動きが途切れてしまい非効率な動きとなってしまいます。

沖縄空手では「手先から動く」という教えがあるようですが手先に誘導されて体幹が動けると重心移動が自然に起こり空手の基礎である正拳突きを軽く行なっても浸透するような打撃になります(筋力ではなく重心移動による運動量を伝えられる為)。


↓切り取り前の動画全編

体幹主導末端操作とは?

元々ダンスを学んでいた当時、インターロック・エクササイズを集中的にトレーニングしていました。その経験がある為に「末端主導体幹操作」という用語を聞いた時に「末端」と「体幹」を逆にした動きもあるとその場で気がつきました。

動作の起点を体幹部に起き、その体幹部の動きを制限させない末端部の使い方。また、体幹の動きに誘導される形で結果的に末端部を操作すること。

これは書籍「黒人のリズム感の秘密」で紹介されている体幹連動運動「インターロック・エクササイズ」がわかりやすいです。下のリンク動画をご参考にして下さい。

大抵は体幹を連動させて使うことができません。

また、体幹が動き始めても末端部が反応してくれずに末端部と体幹が押し合う形になり連動が止まってしまうケースが多々あります。トニーティーダンスを学びインターロック・エクササイズを日々の練習に取り入れていても大抵はこの末端部で体幹の動きが制限されている人が大半です。自分もそうでした。

両者には優劣は無い

「末端主導体幹操作」「体幹主導末端操作」はあくまでも運動パターンの違いでしかなく、この両者には優劣はありません。

書籍「黒人のリズム感」にはまるで「末端主導体幹操作」を「ダウンビート」「体幹主導末端操作」を「アフタービート」として表現しているような記述があります。

ダウンビートが生み出す動きのスピードの特徴は、直接的な立ち上がりの鋭さである。そのパワーはカミソリのように鋭い。アフタービートのそれは、立ち上がりは緩やかであるが曲線的に加速度を増してくる。そのパワーはハンマーのように重い。

「黒人のリズム感の秘密 改訂版 p68」より

これは両者の特徴を上手く表現されています。「黒人のリズム感の秘密」ではリズム感という視点で説明されていますが、実際に「ダウンビート」を「末端主導体幹操作」、「アフタービート」を「体幹主導末端操作」と組み合わせながら読むと理解が深まっていくようです。

また、スポーツ、ダンスなど各ジャンルごとに「末端主導体幹操作」優位だったり、「体幹主導末端操作」優位だったり、両者が混合されていたり、どちらを活用してもよかったりといった特徴があります。

例えば、ストリートダンス系はまさにインターロック・エクササイズが役立つように「体幹主導末端操作」優位の種目です。逆に、空手や合気道は「末端主導体幹操作」優位になります。

野球のピッチングは「体幹主導末端操作」からボールを投げる場面で「末端主導体幹操作」に移行します。

ボクシング、キックボクシングでは人種やスタイルによってどちらかを各々が活用しています(これは意図せずに無意識的にその動作パターンを選択している)。

文化やスタイルに関係している

「末端主導体幹操作」と「体幹主導末端操作」は文化や体型(腕や脚の長短)と大きく関係しています。

日本人は「末端主導体幹操作」優位の文化であり、アフリカンアメリカンは「体幹主導末端操作」優位の文化です。

詳細は書籍「黒人リズム感の秘密」の「ダウンビート」と「アフタービート」を確認していただくとわかりやすいと思います。

このあたりは機会がありましたら別の記事でご紹介したいと思います。

両者とも体幹と末端のつながりが重要

師事している先生の動きは「末端主導体幹操作」優位の動きをしています。また、「黒人リズム感の秘密」の著者である七類 誠一郎(トニーティー:Tony Tee)先生は「体幹主導末端操作」優位の動きです。

トニーティー先生にも何度かインターロック指導員の講習や通常のレッスンを受けているので、どちらも生の動きを見ているのですがやはり、「末端主導体幹操作」も「体幹主導末端操作」も高度なレベルになると非常にパフォーマンスレベルが高くなります。

逆に言えば、日本人が「末端主導体幹操作」優位の文化だからと言ってもそのレベルが低いと単に体幹が使えない手先だけの動きになりますし、インターロック・エクササイズをしていても単に練習のルーティンとして行うならば体幹の動きは末端につながってきません。

どちらの動作パターンとしても体幹部が自由に使えること、末端と体幹をつなげることは必須です。

両者を同時にトレーニングするのが合理的

現在、「ロルフィング®︎のたちばな」ではこの両者の「末端主導体幹操作」と「体幹主導末端操作」の具体的なトレーニング方法を開発中です。

自分自身の身体を通して探求していますが、この2つは同時にトレーニングした方がお互いに補完し合うということを体感しています。

ちなみに、トニーティー先生は僕が言うところの「体幹主導末端操作」の方が「末端主導体幹操作」よりも難しいという表現をされていますが、個人的には異なる意見を持っています。

これは歴史と関係していますが明治以後の急激な西欧化や機械化による運動不足により、現代の日本人があまりにも運動能力が低下してしまったが故に、日本人がアフタービート優位になるのが難しいけども、アフリカンアメリカンはダウンビートを短期間で習得すると判断されたのだと思われます。

もし、現代の日本人もトニーティー先生が見てきたアフリカンアメリカンと同じレベルの「末端主導体幹操作」を備えていたならば感想は変わっていたのではないかと思うのです。

実際に博多のアイドルグループ「ばってん少女隊」のグリーン担当の希山 愛さん(個人的には勝手に「緑の天才さん」と呼ばせていただいています)の動きは完全な「末端主導体幹操作」優位であり、レベルも非常に高く、このレベルの人たちが多くいたならば状況は確実に違っていたでしょう。

下のツイート動画の始めの3回空中を叩く表現は、ストリートダンスのロッキングというジャンルの動き(ドラム)ですが、ロッキングをしっている方が見たらかなり違和感を覚えるダンス表現になっています。ストリートダンスの特徴である「体幹主導末端操作」で本来あるべき予備動作が全く無いからです。

これは握手会にてご本人に確認したところ、振り付けの先生による振付とのことですが、おそらく先生の振り付け(体幹主導末端操作)とは全く違う表現になっている(末端主導体幹操作)と想像されます。

現在は同じ曲(のびしろ行進曲)での同じ場面での振付が少し変わりロッキングの動きに加えてワッキング(もしくはパンキング)という、より積極的に反動をつけた振付に変更されているのですが、このワッキングでの動きは他の日本人ダンサーと同様あまり躍動感の無いダンス表現になっています。

ワッキングのダンス表現は「末端主導末端操作」で代用できるロッキングとは異なり「体幹主導末端操作」そのものがダンス表現になります。これだけ体幹が使える人でも「末端主導体幹操作」優位の動きでは難しいということです。

しかし、希山 愛さんが「体幹主導末端操作」をトレーニングしたならば、あっという間に見事なワッキングの表現ができるようになるでしょう。個人的にはこれを待っています。

今後

今回紹介した2つの動作パターンを身につけた上で「肩甲骨を立てる(立甲)」「骨盤分割」「脊柱の細分化」などを深めていくとパフォーマンスにつながります。

ロルフィング®︎を学び初めてからスポーツやダンスにて通用するロルフィング®︎を追求してきました。ここにきて技術の根底となる動作パターンの理解が深まったことにより、追求するロルフィング®︎像に一気に近づいたという手応えがあります。

今後は、この動作パターンを施術でも改善できる方法を模索していければと思います。

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