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「合気現象」と「4つの支持軸理論」の関係

▼トークイベントにて「4つの支持軸理論」を一通り説明させていただきます。
※動画でも視聴できます。
本記事で取り上げている「合気現象(崩し)」についても触れる予定です。

「合気」を研究対象にしてきた

高校3年の野球部を引退してから天才の身体操作能力を探求する過程で塩田剛三翁の存在を知ってから「合気」という現象に関心を持ちました。

「合気」を簡単に理解してもらうには漫画「グラップラー刃牙」に登場する渋川剛気(塩田剛三翁がモデル)を知ってもらうのが一番わかりやすいかもしれません。

▼画像の向かって右側の人物が渋川剛気です。握手した状態で「合気」をかけて相手(ビスケット・オリバ)の体勢を崩しているシーンです。

厳密的には「合気」の定義は流派によって異なります。「合気」とは別の用語を使用しており実際にはこちらの方が多いと思われます。

分野問わず、一定レベル以上になると「合気現象」は必ず発生します。トップアスリートやダンサーも普通に「合気」を身につけています。

わかりやすく相手を崩したり、投げたりといったデモンストレーションをしないだけです。

「ロルフィング®︎のたちばな」では合気を▼のように定義しています。

【合気とは?】
相手が反応しにくい身体運用、またはその結果身体のコントロールを失った状態。

「合気」をかけることができると体格差、筋力差関係なく、相手を崩すことができます。これは触覚的にですが視覚的にも「合気」はかかります。

例えばバスケットボールなら1on1で相手に反応させないフットワークで抜くことになりますし、ダンスでは観客に対して視覚的に反応させなくなる(どのように身体を使っているのかわからない)ので何度見ても飽きないような表現になります

天才の身体操作能力を身につけるヒントがこの「合気現象」にあるのではないかと考え研究対象としてここまできました。

そして、最近では自分自身が「合気」をかけることができ、またクライアントさんに「合気」身につけてもらう再現性の高い方法論も開発しています。

これは「4つの支持軸理論」の影響が非常に大きく、「4つの支持軸理論」に沿って取り組むと自然に「合気現象」が表れます。

合気を体験する機会

「合気」についてはご縁があり▼のように体験する機会を多くもたせていただきました(頭にタオル、スウェットを履いているのが自分です)。

※「合気」の定義の違いによってこの動画は「合気ではない」と指摘されることがありますが、これは純粋な「合気現象」です。

技術的要素を排除したもの。

つまりこれは武道・武術の技でも何でもなく単なる素の状態。

もし実践を想定したならば技術を使え加えた形になります。

ちなみにこれは痛みが出るぐらい全力で腕や身体を掴んでいます。

演技要素が入ることで先生に恥をかかせない為に、全力で「合気」にかからないようにしていました。

以前、軸トレーニングWSで参加者の方から「どのぐらいの力で掴んでいたのか体験させてください」と言われたので当時と同じ掴み方をしたところ悲鳴を上げられていました。確かに橈骨と尺骨がしなる感覚がありました(^^;;

ちなみに「合気への抵抗力」を高める方法を模索してレベルの低い合気にはかからないようになりましたが、その手法は先生には通用していません。

「合気」をかけられるという体験を多くしましたので、次の段階は「合気を身につける」という段階になります。

この道のりが長くかかることとなります。

「合気」の間違い、誤解

「合気」に関する間違いがいくつかあります。

①「合気現象」自体の否定
②「合気」は一部の人間にしかできない
③「合気」ができれば最強になれる

という間違いや誤解です。

①「合気現象」自体の否定

「合気」の現象自体が日常的にはあり得ないことなのでまず存在自体を否定されるケースが多々あります。

2000年以前は限られた情報源(マニアックな雑誌、ビデオなど)のみで日本武術に関心のある一部の人にしか知られていなかった「合気」ですが、漫画「グラップラー刃牙」に渋川剛気が描かれたことで、一般にも「合気」の存在が知れ渡りました。

但し、あくまでも漫画の中でのことという認識であり「合気というものは存在しない」と主張する人が一定数います。

「合気」自体を自由に使える人がいないということもあり、そう捉えるのは自然です。

但し、事実だけ述べると「合気現象」は確実に存在します。

筋力など物理的に考えると確かに不可能ですが、神経生理学的に考えると人間の盲点や反射を巧みに利用していることがわかります。

②「合気」は一部の人間にしかできない

これは武術を嗜んでいる人に多い間違いです。

特に合気ができる師に学んでいるお弟子さんに多い印象があります。

つまり、自分の先生にしか「合気はできない」という主張です。

この心理としては、自分自身が「合気」を身につけたく稽古を積んでいるのにどうしてもできない。なので、先生を特別視することで自分自身を誤魔化していると考えられます。

また、「合気」に興味はあるけども身につかないので興味を失ったフリをしているケースも多々見ます。

実際に体験した事例ですが、武道系の知人が主催するWSに参加した時のことです。

「合気現象」のワークをしていた時のことですが、パートナーになった方が頑なに「こんなことはできない」とことあるごとに主張していました。仲間内のWSだったこともあり、説明された手順を無視した自分勝手な解釈のやり方でワークを行っていました。そして、こちらがワークについて探求しようとすると「できるわけない」と邪魔をしてくるわけです。

「合気」を身につけることを諦めているのを他者にも強制しようとする心理が働いていると思われます。

でも、「合気」がわかってくると決して特別な現象でないことがわかります。

物事には段階がありますが、1段階レベルならば誰もが「合気」をかけることが可能です。

「合気」というのはあくまでも人間の身体に備わっているシステムを利用しているだけです。

人間のシステムに備わっていない場合には「合気」など誰もできません。

誰かができるということは人間にはそうしたシステムが存在しており、そのシステムを活用すれば全人類が行うことが可能になります。

あとこれは「合気」に限った話ではないのですがWSなど何かを学ぶ際に自分勝手な解釈で行うのはやめましょう。持論を展開したいのならば自分でWSを開くべきです。

他者の開催するWS、講習会に参加したのならば指導者の説明通り素直に行う必要があります。できる・できないはその後でのことであり、自分勝手に行うとパートナーになった人たちが非常に迷惑します。

WSの場に、持論は必要ありません。

③「合気」ができれば最強になれる

これは今までとは逆に「合気」への幻想が強い為に起こることです。

「合気」の体格差関係なく相手が飛んでいくイメージが強いので、これだけで最強になれると思ってしまうのです。

でも「合気」がわかってくるとこうした幻想はなくなります。

「合気」には漬け込む点が多々あります。

まず「合気」とは神経生理学的反応を活用しているので、相手次第ということです。

相手がそもそも神経生理学的に「合気」にかかりにくい場合にはどんな達人であろうとかけることは不可能です。

極論を言えば「合気」とは相手がこちらを感覚してくれない場合には基本かかりません。

道場などでは過敏なほど合気にかかるのは道場生たちが基本的に「合気にかかろう」と取り組んでいるからです。なのでかかりやすいように自然に相手を感じようとしてどんどん「合気」にかかりやすくなります。

こうした取り組みを続けていくと「感応」という状態になり、何をされても簡単に身体が崩れてしまう状態になってしまいます。なので、手を触れなくても派手に飛ぶ、という現象が起こります。

「感応」も「合気」の要素の一つですが、「感応」に頼っていると知り合いにしか「合気」をかけることができなくなります。また、『この人は「合気」をかけられる』という思い込みがあると本来は「合気」などかからないはずなのに勝手に「合気」にかかってしまいます。

実際に「合気現象」を売りにしている組織に属している方と対人ワークを行なってみた時がありますが、非常に興味深いことが起こりました。

まず違いを体験してもらう為に、初めに通常の力まかせの動作で相手を無理やり崩そうとした時です。本来なら普通に耐えられるはずです。なのに大きく身体が崩れていくのです。

つまり、勝手に「感応」してくれているわけです。

自身が認めている人だったり、仲間内ではこうした「合気現象」は生じますが、外部に行ったらこのレベルでは全く通用しません。

実際有名な話で、格闘家と実際に試合をした人が数名います。

結果は見事までの惨敗でした。

「合気」とは万能なものでもなんでもなく、前提条件が多々あるものです。

身体の開発が正しく行われているのかの評価としては使えますが、試合の場合は相手は必ず対応します。

柔道やブラジリアン柔術の基本技の練習である「打ち込み」と違いものが「合気」にはあります。

打ち込みでは背負い投げなど完璧な状態で投げる練習をします。

でも試合ではそうそうそのような完璧に技をかけることはできません。相手はかからないように真剣に対応するからです。

「合気」も同じです。

一般的に手首を持たれたりして「合気」をかける練習をしますが、実践では手首を持たれるということはまずありません。

また、「合気」がかかるのに大抵はタイプラグがあります。

試合などではこの間に対応されてしまうのです。

「合気」は万能とはほど遠いというのが個人的な考えです。

「合気」のメカニズム

合気をかけることができるメカニズムとしては、

「重心移動」

です。

これは人間の盲点なのですが「適切な重心移動」をされるとその動きを触覚的にも、視覚的にも認識することが難しくなります。

そして、この「適切な重心移動」とは、

その場にとどまろうとする身体の無意識の反応が無い」重心移動

になります。

この「その場にとどまろうとする身体の無意識な反応」を居着きと呼んでいます。

スポーツ関連の書籍でも以前とは違った意図から「体重移動」「重心移動」という用語が使われることが増えてきた印象があります。

但し、その多くの書籍に掲載されているプレイの写真を見ると皆居着いていたりします。

この「居着きの無い重心移動」の重要性についてスポーツ界で重視されるにはまだもう少し時間が必要のようです。

適切な重心移動ができるならばそれだけで「合気現象」が生じます。

その為に「ロルフィング®︎のたちばな」では身体の開発具合を確認する手段として「合気現象」を活用しています。

「ロルフィング®︎のたちばな」のワークルーム にはキックミットが常備されているのですが、「合気」をかけられるようになったクライアントさんは貫通力のあるパンチ(突き)を打てるようになります。

※肘などで押す突きではありません。

逆に貫通力のある突きが打てると「合気」をかけることができます。

この関係性はかなり強いです。

スポーツなどではこうした打撃の方がわかりやすいと思われます。結局、スポーツではいかに重心移動による「運動量(質量×速度)」を効率良く使えるかが重要になります。

「筋力」というのはあくまでも重心を移動させる為の補助的な要素でしかありません。

筋肉が発達しているのに意外と打撃力が弱いという場合は、この重心移動ができていないのが原因です。

「合気」を体験する手段としては、

⚫︎意識操作(知覚、気功など)
⚫︎皮膚への刺激
⚫︎軸トレーニング

があります。

これは結果的に居着きの無い重心移動を身につける手段です。

意識操作などで「合気現象」ができると「エネルギー」や「筋力では無い力」「地面からの力」と表現される傾向がありますが、これは全て「重心移動」による運動量(質量×速度)のことになります。

支持軸を機能させると自然に「合気現象」が現われる

「4つの支持軸理論」において、それぞれの支持軸が機能する身体操作ができると自然に「合気現象」が生じます。

これは支持軸が通ることによって「重心移動」が自然に起こるようになる為です。

基本となる4つの支持軸は

①内側軸(1軸)
②中間内軸(2軸)
③中間外軸(3軸)
④外側軸(4軸)

あります。

各支持軸は、▼の足裏の各番号に対応したライン上に体重を支える点(支持点)を置き、このライン上をカカトから指先の前後に支持点を移動させたり、ライン全てで身体を支えることによって、重心移動を適切に行うことが可能になります。

これはあくまでも無意識にこのライン上に支持点が置かれます。

なので「内側軸(1軸)」でありながら④のラインに意図的に支持点を置き身体を支えようとしても「外側軸(4軸)」の機能は発揮できません。

なぜならば実際には優先的に①のラインに支持点を置いてから、④に支持点を置くことになるからです。

支持軸が機能するにはあくまでも優先的に体重を支えるラインが重要になります。

4通りの「合気」が存在する

実は各支持軸によって「合気」はできますが感触や特徴がまるで異なります。

基本的には▼の通りです。

①内側軸(1軸)の合気▶︎鋭い、横方向が苦手
②中間内軸(2軸)の合気▶︎力強い、捻りが得意
③中間外軸(3軸)の合気▶︎一番力感が無い、万能型
④外側軸(4軸)の合気▶︎かかるのに時間がかかる、横方向が得意、縦方向が苦手

「軸」の強化やギア向上を行うとまた質感や特徴が変わり、4つの違いの差がなくなっていきます。

ちなみに、合気道は「内側軸(1軸)」タイプであり、大東流合気柔術は「中間外軸(3軸)」になります。

「合気」という現象だけを目指すとしたら、合気道ではなく大東流合気柔術を選択する人が多い印象もうなづけます。

「中間外軸(3軸)」自体が感触として力感が無いことと、動きがスタイリッシュの為です。

但し、身につくかどうかは自身の支持軸とその流派の支持軸タイプとの一致が重要になるので、「内側軸(1軸)」文化の日本人では合気道の方が身につけやすいと思われます。

支持軸については後天的に変える方法も見つかっているので、支持軸タイプを流派のタイプと一致させることが上達の近道です。

こうしたことは武術だけでなくスポーツ、ダンスにも当てはまります。

「4つの支持軸理論」を活用すると各競技の支持軸タイプを分析して、その競技に適した支持軸を選択することが可能になります。

例えばサッカーではメッシ選手のスタイリッシュでありカリスマ性のあるプレイに憧れる方は非常に多い印象があります。

でも「中間外軸(3軸)」のメッシ選手のプレイスタイルは「中間外軸(3軸)」でないと身につけることができません。

これは支持軸による「脳神経系の運動プログラム」の特徴の為に努力ではどうすることもできません。

「合気」は当たり前になっている

毎週火曜日(月4回)に開催している「軸トレーニング研究会クラス(軸トレ研究会)」では毎回大きな発見があります。

最近では全ての支持軸をOFFにした「ゼロ軸」、逆に全ての支持軸をON西田「全軸」の発見がありましがそれ意外にも、各支持軸自体を強化する方法も発見されています。

こうした発見があると毎回身体感覚だけでなく「合気現象」で確認します。

まずは、両手を掴まれた状態で肘を曲げるだけの合気上げで確認しますが、支持軸の強化を行うことで「合気」のかかりがますます強くなってきています。

前回の軸トレ研究会では片手を掴まれた状態で前腕を外に捻る(前腕の回外)動作で相手を崩せることができるようになってしまいました。

▼持ち方は異なりますが漫画「グラップラー刃牙」のシーンのようなことが現実にできてしまったわけです。

これも一見前腕だけの動きに見えるのですが、重心移動が自然にできている為に前腕による動きが感知できない為に起こる現象です。

こうした経験を軸トレ研究会の参加者は当たり前に体験しているので、多少の身体が崩れる程度では、

「効かないですね」

という感想を漏らすことが多くなりました。

でも合気道を学んでいた立場からすると、その「効いていない状態」でも十分なわけです。このレベルで合気道の型稽古ができると十分に評価されます。

また、参加されているお一人の方は様々な経験をされておられるのですが、その中で塩田剛三翁の技の再現に取り組まれています。

「内側軸(1軸)」を機能させるポジションを発見され、実際に試してみると塩田剛三ごっこができてしまうのです。

例えば手を掴んでいても、掴まれた状態でも関係無しに、下にしゃがむと相手も素直にしゃがんでくれます。

これを咄嗟に行われると、何をされたのか全くわからず膝が砕けてしまいますのでかなりびっくりしますね。

終わりに

上記でも触れましたが「適切な重心移動」が「合気現象」の根幹だと個人的には考えています。

実際のこうした「合気現象」を合気道や大東流合気柔術で活用するにはその流派の稽古を通して具体的な技法を学ぶ必要があります。

「ロルフィング®︎のたちばな」の専門分野は武術ではありません。

ボディワークです。

その分野の競技特性を分析して上達してもらう手助けをするのが仕事になります。

今回述べた「合気観」ですが、

「自分のところの合気とは異なる」

という意見が出ることが想定されますが、それはあくまでも表現型の違いだと捉えています。

枝葉末節的な表現型の違いに関してはここでは論じていません。

表現型を追求してしまうとその流派にしか恩恵がなくなるからです(「特異性の原則」)。

細かい技法の違いなどは個別に分析する必要があります。枝葉を取り去った幹が現在探求している姿だと思っています。

目指しているのはどの分野にも応用できる「汎用性の原則」に基づくもの。

個人的な思いとしては、

「費やした労力と時間に比例した上達を確実にする」

世の中にしたい、ということがあります。

今後も憧れの選手や技を身につけるお手伝いができればと思います。

単発で身につくとは言えませんが、スポーツ、ダンス、武道など伸び悩んでいる方は「ロルフィング®︎のたちばな」のセッションを受けることを選択肢の一つにしてください。

施術と軸トレーニングで身体を本質的に改善します。

全ては「4つの支持軸理論」がベースとなります。

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