はじめに
4月23日(火)に行った練習会クラスではTwitterで回ってきた動画の対人ワークを課題として色々と行なって見ました。
動画では「力を抜くとできる」と説明されていますが、その「力を抜く」ことでイメージするものが各個人で異なっている為になかなかできるようになるのが難しいものです。
そこで、「力を抜く」という点をもう一歩踏み込んで具体的な動作として練習していきました。
今回の記事では練習会クラスでの内容に加えて、練習会クラスが終わった後の雑談の流れで、「味覚と身体運用の関係」や「ももクロのメンバーで誰が1番身体が使えるのか?」という話になったのでそのこともご紹介したいと思います。
元になったツイート
▼が回ってきたツイートです。
片手をパートナーに両手である程度の力でしっかり掴んでもらい、この掴まれた部位をなんとかして動かすという合気道的な対人ワークの基本的なものです。
肘、前腕が動かせることに気づく
一般的に同じ体格同士でこの対人ワークを行うと相手を崩すことはなかなか難しいと思います。理由はシンプルで、「手首を掴まれる」という心理的な圧力によって自分自身の身体を固めて動かなくしてしまうからです。
この対人ワークならば、肘、前腕を自分の筋肉の緊張によって動かなくしてしまう傾向があります。これを掴まれていない側の腕のように動かすことができればそれだけで意外と相手を簡単に崩すことができるものです。
これが「力を抜く」という1つの解釈です。
ですが、いきなり掴まれた側の肘や前腕を固めずに動かそうとしてもそれができないから苦労するわけです。
なのでより簡単なやり方をしていきます。
まずは、足首を動かして見ます。多分、普通に動かせると思います。
要はこの足首を動かしたような感覚で掴まれている側の腕を動かすことができればよいのです。なのでこれを腕から遠く離れた足の関節を動かして行くことによって同じような関節を固めない使い方をしていくことで、掴まれている側の肩周りや肘、前腕を同じ関節を固めない動きをしていきます。
するとこれだけで数センチ程度ですが掴まれた部分を動かすことができます。その時、掴んでいる側はどうしても動かされてしまう感覚になる。
これは人間の身体が「骨」と筋肉などの「軟部組織」で形成されている為です。人間の身体は思っている以上に自由度があるので、防御反応を起こして関節を過度に緊張させなければどんなに強い力で掴まれても多少の幅で動かすことができます。
1センチでも動かすことができればあとは相手の弱い部分を見つけて意図的に腕を動かすだけで相手は腕ではなく足の土台から崩すことができます。
これは受け手が感知しづらくなる動きになった為です。視覚では手の動きは見えていても身体は感知できていないので一瞬反応が遅れてしまい、足から崩れます。
練習会クラスでは、
⚫︎足
⚫︎膝
⚫︎骨盤
⚫︎腰
⚫︎肋骨
⚫︎首
⚫︎頭
⚫︎顎
⚫︎鎖骨
⚫︎肩甲骨
⚫︎肩
⚫︎上腕骨
⚫︎肘
⚫︎前腕
⚫︎手首
⚫︎指
と下から順番に軽く動かしたり、ゆらしたりしていき掴まれている側の指まで行っていきました。
このように順番に動かしていくと掴まれている部位を動かせば相手は素直に動いてくれるようになります。
一見、手間がかかりますがこのように丁寧に行っていくと誰もがこの対人ワークを行えるようになります。
後は、この感覚をいきなり掴まれた状態でも行えるようにしていくだけです。
すると動画で言うところの「力を抜く」状態が身体で理解できます。
これは身体操作でのアプローチになります。
大脳的意識の無駄使い
対人ワークでなぜ関節を過度に固めてしまうかと言えば、掴まれた腕をなんとかしてやろうという大脳的な意識を過度に働かせてしまうからです。大脳的な意識での動きというのは非常に大雑把で雑なものなのでこの意識で身体を動かす限り、何をしても上手く行きません。
慣れていないことをしたり、他者から触れられるという状況では過度にこの大脳的な意識が反応しようとします。これが防御反応となり身体を過度に緊張させるのです。
「力を抜け」という教えは“この大脳的な意識をできるだけ使うな”という解釈ができます。
この解釈は以前から認識していましたが、練習会クラスの中でふと気がついたことがありました。
それは、
逆にこの大脳的な意識を積極的に別の部分に使ってしまったらどうなるのだろう?
という疑問でした。
つまり大脳的な意識のメモリ(容量)を意図的に無駄使いするということです。
そこで即実験してみました。
そこで
掴まれていない側の手に大脳的な意識を集中させてみました。目でも掴まれていない側の手をしっかりと中心視野で凝視しながら行います(これは武道、スポーツ、ダンスなどでは一般的にはしてはいけないこととされます)。
このように大脳的意識を無駄使いした状態で適当に掴まれている側の腕を適当に動かしてみると、あっけないほど簡単に相手を動かせました。相手が真剣に掴んでいるほど相手は勢いよく崩れていきますね。
大脳的意識を意図した動作をする際にできるだけ使わないことがスポーツやダンス、武道では重要になりますが、こうした対人ワークではこの感覚を掴むのが非常にわかりやすいですね。
但し、これは意識操作でのアプローチですが、身体操作的アプローチと比べて少し難しくなるようです。
ある参加者の方はどうしても上手く行きませんでした。
関係無い側の手に大脳的意識を向けていても、実際に掴まれた腕を動かそうとするとそちらに大脳的意識を向けてしまうというように、どうしても動作と大脳的意識を一致させてしまうようです(無意識的に動けない)。
偶然なのかわかりませんが、上手くできた方々は皆ロルフィング®︎10シリーズを受けられていました。ロルフィング®︎を受けるとこの意識操作を身につける助けになるように感じていますが、この点は実際にそう言えるのか、今後追っていきたいと思います。
小学生時代に身につける
今回取り上げた対人ワークの身体使いは身体を緊張させない為にかなり役立ちます。他者に触れられるというのは生物としてはかなりの刺激になりますから過度な反応がでるのは当然です。但し、それは制御できた方が能力としては高くなります。
こうした能力は合気道や社交ダンス(競技ダンス)のように他者と接触する競技だけでなく、基本的に直接的に接触しないスポーツ、ダンスでも重要になります。
小学生ぐらいに遊びながらこうした能力を身につけておくだけでもその後の人生に大きな影響となることが想定されます。
日本の義務教育には「体育」という教科がせっかくあるので(諸外国では「体育」が無い国が多いとのこと)単にスポーツやダンスを行うだけでなくそのスポーツやダンスの基本となる動きを上達させる種目も取り入れていくと日本の子供たちの身体能力は劇的に高まるように思います。
今回の対人ワークだったら別に力を抜かなくとも力づくで相手を崩すという遊び(相撲のような感覚)でも十分な効果があります。それにプラスして筋力ではなく相手を崩せる体験があると身体や動作への興味を持ってもらいやすくなるように思います。
味覚によるアプローチ
練習会クラスの終了後、雑談をすることが多いのですが、今回もその雑談の流れで「知覚と身体の関連性」についての話になりました。
空中腕相撲を課題として飴をなめた時、苦いチョコレート(カカオ95%)を食べた時でどのように結果が変わるかを実験。
何もしていない状態では、なかなか相手に勝つことはできません。
それが飴を舐めると途端に強くなるのです
苦いチョコレート(不味い)を食べると極端に弱くなります
この3種類をその場にいたメンバーで確認。
甘いものを舐めるという快適な精神状態だと身体がまとまった身体使いができますが、不味いものを食べて不快な状態だと身体の動きが分散してしまうという身体の反応です。
これは味覚だけの話ではなく、「感謝」だったり「好きな人を思い浮かべる」といったポジティブなイメージでも身体はまとまりますし、「妬み」だったり「嫌いな人を思い浮かべる」といったネガティブなイメージでは身体は分散します。
そして、面白いのは“手段として”飴を舐めても身体はまとまらないということです。
これは上で言った大脳的意識が強くなった状態だと言えます。そういった意味で味覚といった知覚よりも、大脳的意識(煩悩)の方が身体への影響力が強いということかもしれません。
つまりは、こうした制御をする為に瞑想などをするわけですね。
このように考えていくと瞑想をしていると身体はまとまって使えるということですから、今回取り上げた対人ワークは簡単にできてしまいます。
逆に言えば、瞑想をせっかく行なっていたとしても今回のような対人ワークができないのなら瞑想が適切にできていない、もしくは身についていないということかもしれません。
誰が1番身体を使えている?
雑談の中では「ももクロ(ももいろクローバーZ)の中で誰が1番身体が使えているのか?」という話題にもなりました。
この「身体が使える」というのは「素の身体の使い方」なのか、単に「ダンスの技術」なのか、「総合力」なのかで意見が変わってきます。
この場では「素の身体の使い方」という視点での個人的な意見を述べさせていただきました。
その場に居られた方々のご意見を聞くと非常に面白かったです。「ダンスの技術」という視点で見られているようでした。「ダンスの技術」という視点は適切な見方だと思います。技術はわかりやすい特徴があるので「素の身体の使い方」という視点がない場合では大抵この視点で物事を見る傾向はあると思います。
但し、話題を出された方は施術にご興味があるのでその場合に重要になるのは「素の身体の使い方」という観点になるかと思います。
また「才能の発掘」という視点だと「ダンスの技術」の重要性というのはおまけ程度かもしれません。
年齢が低ければ低いほどそうなります。即戦力でない限り技術は後で身につければ良いからです。「才能の発掘」と言う場合には如何に“のびしろ”が大きいかという観点が重要になります。それは「素の身体の使い方」だと個人的には考えています。
技術で誤魔化すことができない
実は「素の身体の使い方」という視点だと、アイドル系のダンスはわかりやすいのです。
▼はももいろクローバーZの「Z女戦争」という曲のプロモーションビデオです。頭部を横に振るというシンプルな動きですがこの場面と別のダンスの場面を比較するとその印象の差が明確になると思われます。
おそらく、見る場面によって印象が真反対になるメンバーがいるかと思います。
※この場面ではメンバーカラーが無いのでももクロを見慣れていないと比較が難しいのですが^^;
このような誰でもできるような振り付けでは「素の身体の使い方」の判断は容易です。これは動きがシンプル過ぎて専門技術で「素の身体の使い方」を誤魔化すことができないからです。
全く異なった動き
▼は「ばってん少女隊」による「リトルフクオカ福おどり」というローカルな踊り?です。同じ振り付けでありながら、細かくみると6人とも全く異なった身体使いをしているのがわかると思います。
こうした何気ない振り付けだと「素の身体の使い方」だったり、日常の動作の癖が明確に表れます。
ちなみに緑の天才さん(僕が勝手にそう呼んでいるだけですが)こと向かって1番右側の希山愛さんは骨盤と大腿骨がしっかり股関節で切れた動きをしています。脚が長く見えますし、キレのある動きになり、脊柱もまっすぐのままです。典型的な末端主導体幹操作系の動作パターンですね。
▼が公式のお手本。
この動画には振付練習用のお手本もあるので非常に学びになります。
お手本を見ると運動構造としてはどのメンバーとも異なります(お手本では片足重心を維持しているのに対して「ばってん少女隊」メンバーは重心の移し替えをしている)。
このことから細かい指導はされておらず各メンバーのまさに「素」の動きに近いのではと推定されます。
まとめ
練習会クラスで行う対人ワークでは身体の使い方を練習するというのが一番の目的です。相手が崩れるかどうかはあくまでも一つの指標にすぎません。
このような対人ワークでは相手が大きく崩れることに加えて「抵抗力」という視点が重要になります。
「抵抗力」とは対人ワークにおいて受け側が力づくではないけども崩れにくくなるというものです。「抵抗力」が身についてくると行い手の動きへの反応が高まり、事前に感知されてしまうので適切な身体使いをしても全く崩れなくなります。
こうした「抵抗力」がついた相手と行うとわかりやすくは崩れなくなります。
練習会クラスに参加されているある方になるとこちらが動こうとした瞬間に感知されますから全く動けなくなるほどです。
この段階に達したら「抵抗力」がある相手を上回るような「素の身体の使い方」を身につけるか専門の技術を磨くということになります。
今後は技術的な要素も取り入れていければと思います。
5月の練習会クラスは7日(火)に開催します。
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