亡くなってしまいましたが僕がストリートダンスを学ぶきっかけとなった書籍『黒人リズム感の秘密』の著者であるトニーティー(七類誠一郎)先生が開発したダンストレーニングに「インターロック・エクササイズ」があります。
このインターロック・エクササイズは“黒人のリズム感を育成する”という目的で開発されたと知られていますが実は「4つの支持軸」で分析するとリズム感を含む黒人の軸感覚とは異なる要素を鍛えている、ということがわかってきました。
【4つの支持軸】とは「ロルフィング®︎のたちばな」が発見した身体運用法です。
【4つの支持軸】にはそれぞれ明確な特徴があり、その視点で分析すると人種の特徴を説明できてしまいます。
4つの支持軸とは足底の特定の部位を中心に使うことで、重心移動の仕方や体幹の使い易さといった特徴が現れます。これは力学的な要因もありますが、神経系の要因が非常に大きいことがわかってきました。
▼に4つの支持軸を列挙しました。支持軸の横に記載している人種がその支持軸を文化的に身につけていることを表しています。
①内側軸(1軸):日本人
②中間内軸(2軸):白人、多くのアジア人
③中間外軸(3軸):ラテン系
④外側軸(4軸):黒人
▼の図は各支持軸において、このそれぞれの番号の水平面から下が“能動的”に可動しやすいことを示しています。
この図で説明すると黒人の文化的軸感覚とは④の外側軸であり、頭部上の空間から下(つまり全身)を可動させる特徴があります。
ちなみに、日本人は①の内側軸なので能動的に動かしやすいのは股関節から下です。このことから日本人が体幹を固めてしまう傾向があることを説明できます。
但し、実際には日本人の内側軸(1軸)は能動的には体幹を動かすことは苦手ですが手足といった末端部分で受動的に体幹を動かすことによって体幹を自由に使えるという特徴があります(これを「末端主導体幹操作」と呼んでいます)。
トニーティー先生が開発されたインターロック・エクササイズとは▼の動画の内容になります。
※この動画はトニーティーカンパニーの教材で当時2本セットのビデオとして、料金5万円ほどで販売されていたものです。僕自身も当時購入しており現在でも大きな影響を受けています。ストリートダンスのレッスンにも通っていましたがこのインターロック・エクササイズによって運動能力について希望を持つことができました。
この動画を見てもらうとわかりますがインターロック・エクササイズ自体の特徴は上記の「中間内軸(3軸)」に該当します。
▼の図で言えば③の水平ラインより下での動作ですが、インターロック・エクササイズの特徴と合致します。③の「中間外軸(3軸)」は4つの支持軸の中で1番体幹のコントロールがしやすい軸になります。
なのでインターロック・エクササイズ自体は「中間内軸(3軸)」タイプの動きであり、黒人の動きである「外側軸(4軸)」ではないのです。
▼は元ボクシング選手のメイウェザーのパンチングボール?打ちです。
わかりやすい「外側軸(4軸)」の足底のラインを使っています。④から反対の足の④に重心を移動させているので身体全体が動いています。
この時の体幹の動きを見てほしいのですが体幹は一見それほど動いていないように見えます。ですが実際には位置座標的には大きく動いているのです。
これは「外側軸(4軸)」の特徴である頭部よりも上から下を自由に使える特徴と一致します。
そして「外側軸(4軸)」を使ったダンスも同じです。意外に黒人のダンスでは見た目はそれほど大きく体幹を動かしてはいません。トニー先生も動画を見ると体幹を大きくは動かしている印象はありません。
実際の黒人の動きというのはインターロック・エクササイズとは印象が異なるのはわかっていただけると思います。
ちまみにトニーティー先生自身は完全に「外側軸(4軸)」タイプです。
トニーティーダンスを学んでいた当時、トニー先生と生徒さんの動作の印象が全く違うことが疑問でした。
トニー先生と比較すると、生徒のほとんどは身体の中心のラインを維持したままなのです。
「4つの支持軸」を発見した今ではこの理由が明確に説明できます。
トニー先生は「外側軸(4軸)」を使っており、生徒の多くは「中間外軸(3軸)」を使っていたからです(人によっては「内側軸(1軸)」)。
支持軸の種類はその支持軸の特徴にあった「リズム感」も生み出します。
これは簡単な実験によって体感できます。各支持軸を使ってそれぞれ歩いたり、軽く走ったりすることにより、その支持軸での身体全体のリズム感が非常にわかりやすく外部から見えますし、その人自身も体感できます。
先日のWSでも確認しましたが「外側軸(4軸)」を使って歩いたり、走るとそれだけで自然に「&カウント」が動作として表れるのです。
あらゆる動作において
1「&」2「&」3「&」4「&」5「&」6「&」7「&」8「&」、、、
といった「&」カウントが産まれます。
これは「意識する、意識しない」という次元ではなくあらゆる動作で「&」が勝手に産まれるということです。
そしてこの「&」が書籍「黒人リズム感の秘密」で言うところの「タメ」になります。
この「タメ」は意識的になんとか作ることができますが、それでも「外側軸(4軸)」が自然に産む「タメ」とは全く質が異なりますね。
逆に日本人の軸感覚である「内側軸(1軸)」は全く「&」は産まれません。
1・2・3・4・5・6・7・8、、、
と言った感覚。これは別にデメリットでもなんでも無く、日本の武術では「拍子の無い動き」「消える動き」として役立っています。
こうした違いは同一人物が「外側軸(4軸)」と「内側軸(1軸)」を順番に使い歩いたり、走ったりすることによって明確に見ることができます。
面白いのは「内側軸(1軸)」→「外側軸(4軸)」よりも「外側軸(4軸)」→「内側軸(1軸)」に変えた方がわかりやすいということ。
先日のWSでは「外側軸(4軸)」→「内側軸(1軸)」に変えた途端に参加者から笑いがもれました。
それだけ違和感がでるということです。
「外側軸(4軸)」→「内側軸(1軸)」だとどこかしら滑稽さが表れるようです☺️
そして、このことからわかるのは動作は足し算よりも引き算の方がわかりやすいということでもあります。
「&」カウントが追加された時よりも「&」カウントが無くなった時の方が人はその違いを認識しやすい。
このような現象を知る者として「黒人のリズム感」というものが「外側軸(4軸)」を身体に通した時に自然発生的に産まれる、この「&」カウントと無関係ということは考えられません。
念の為に再度述べたいと思いますが、インターロック・エクササイズにて意図的に「タメ」たものと「外側軸(4軸)」を身体に通した際に自然に産まれる「タメ」は全く別物と考えた方がよいでしょう。
これがわかると日本人でも黒人のフィーリングを掴みやすくなるのは確かです。
黒人の身体能力の1つとして「バネ」が挙げられますがこの「バネ」がまさに「&」カウントの「タメ」そのものです。
「外側軸(4軸)」の動作トレーニングを急激に行うと「外側軸(4軸)」用の筋肉や筋膜、神経系が未発達なので疲労が大きくなったり、これまでつったことがない部位がつったりといった現象が起こりますが、これは動作の「バネ」「&」によるものだと思われます。
こうしたことから、後天的に「支持軸」を実用レベルで変えるには年単位の取り組みは必要になるでしょう。
現在、トレーニング業界では「リズム・トレーニング」という音(ビート )に合わせて動くというトレーニング方法が生まれていますが、この「リズム・トレーニング」では当然「黒人のリズム感」は全く育成されません。