2023年4月1日(土)にサンクチュアリ出版社様からのご依頼によりイベントを開催します(今回で2回目)。今回の記事で触れている「機能的脱力(柔らかく曲がらない腕)」についてのワークやトレーニングをご紹介予定ですのでご興味ある方はリンク先をご確認下さい。
はじめに
スポーツやダンス、武術では力を抜く「脱力」が重要と言われています。
ですが脱力は1つだけではありません。
少なくとも身体が機能する脱力と身体が機能しない脱力の2つがあります。
前者を機能的脱力、後者を非機能的脱力とここでは呼びたいと思います。
「脱力が大事」ということで取り組んでいても間違って非機能的脱力に取り組むとどれだけ熱心に行ってもパフォーマンスが向上することはありません。
「機能的脱力」が身につくと色々と不思議な現象が起こりますが、今回はその現象をご紹介します。
機能的脱力
機能的脱力が身につけているかを簡単に評価する方法が▼の動画の「柔らかく曲がらない腕」です。
相手の肩に手首を置いた状態で、相手に自分の肘に体重を乗せて無理やり曲げようとしてもらいます。
機能的脱力ができていれば、感触は柔らかいのにも関わらずどんなに相手が肘を全力で肘を曲げようとしても肘は曲がりません。
これは理論上どんな体格差があっても曲がることはありません。
なぜならば相手の意図としては肘を曲げようとしますが、実際には自身の関節を単に固めている為です。
なので、相手の手首を掴んで伸ばしていた腕を引き抜いても相手の腕を空中に保持することが可能になります。
理論上は格闘家のボブ・サップ選手のような筋肉質で大柄な人物が全力で肘を曲げようとしても曲げられることはできません。
▼ボブ・サップ選手
▼が単に筋力で耐えるやり方になります。
通常の身体使いの場合には、相手は体重をかけて肘を曲げようとするので手首を片手で掴んで持ち上げようとしても空中に保持することはできません(そのまま下に崩されます)。
これは小柄な女性が相手でも片手で空中で保持することは非常に難しいと思われます。
そもそも体格差が大きい場合には耐えられず肘を曲げられてしまいます。
相手の感覚を狂わせる
機能的脱力ができると相手の感覚を狂わせる効果があるようです。
感覚を狂わせているので実際には単に自身の関節を固定しているだけなのに、肘を曲げるのに筋力を使っていると誤解しているわけです。
触れた相手を居着かせる
この相手の感覚を誤解させた状態(関節を固定した状態)を「居着いた状態」と呼んでいます(実際には「居着いた状態」は数種類あり、それらの状態の1つということになります)。
上記の「柔らかく曲がらない腕」だけでは単なる宴会芸ですが、この相手の感覚を誤解させる効果は色々な場面に応用が可能です。
相手に掴まれた腕を「機能的脱力」にすると相手の力を抜かすことができます。
この状態で合気上げなどを行うと簡単に手首を持ち上げることが可能です。
なぜなら相手が居着いてくれるからです。
また、逆に相手の手首を「機能的脱力」の腕で掴むと相手は居着いて力が抜けてしまうので、手首を動かして相手を崩すことができます。
直接触れなくとも居着かせる
面白いのはこれは相手に触れていなくとも同じ現象が起こるということです。
「機能的脱力」にした腕を相手に近づけると相手は居着いてしまうので、別の人に押したり、腕を掴んで動かしてもらうと簡単に相手を自由にできてしまいます。
運動が苦手な人の身体の使い方
実は、運動が苦手な人はこの居着いた状態で身体を使っています。
よくスポーツでは「10割ではなく8割の力で行いなさい」と指導されることがあります。
これは10割の全力で筋力を使おうとすると居着いてしまい関節を固めるのに筋力を使ってしまい、身体を動かすことに筋力を使えなくなってしまうからです。
関節を固定してしまうので、このような方はガチガチな動きになっています。
当然、思うように身体を使うことができないのでスポーツなどが上手くできません。
実際は腕力で持ち上げることができる
片手を両手で掴まれた状態で肘を曲げて手首を持ち上げる状況をイメージしてください。
一見、片手対両手なので手首を持ち上げることは難しいように思われます。
でも実際に同じ体格の人物が相手なら以外と手首を持ち上げることができます。
というのは意外と片手に対して体重をかけて抑えることは難しいからです。
正座の状態なら10キロも体重をかけることができません(大学の合気道部時代に体重計で測定して確認したことがあります)。
立位ならば自分の2本の足で体重を支えてしまうのでさらに体重をかけることができません。
そして、男性ならばアームカール(肘を曲げる動き)で10キロ前後のダンベルは持ち上げることができます。
すると本来の筋力が発揮できれば両手で片手を持たれていても持ち上げることが可能です。
物理的に考えると手首を持ち上げることができない方が不思議に思えます。
でも実際にこの条件で行ってみると大抵の人は手首を持ち上げることはできません。
何故ならば手首を掴まれることで身体が居着いた状態になってしまい、腕を動かすのではなく肘を固定した使い方をしてしまうからです。
特に手首は人間にとって感覚が強い部位になるのでそこを力を入れずに触れられるだけでも居着着やすくなる傾向があるのです。
合気道や合気柔術では手首を掴まれた状態で技をかける稽古を行いますが、1番身体が居着きやすい手首を掴まれた状態で居着かないようにする目的があると考えると、合理的な稽古方法ということができます。
ですが居着かないで技をかけることは難しいのが現状です。10年稽古をされている方でも居着いてしまう方は珍しくありません。
ですが、稽古に「機能的脱力」という観点を持つと短期間で上達することできます。
体幹と腕をつなげるだけ
上記の動画のような「柔らかく曲がらない腕」は実は誰でもその場でできるようになります。
要は体幹と腕をつなげると最低限の「機能的脱力」になるので、肘が曲げられなくなります。
体幹と腕をつなげるワークを開発していますが、そのワークを行うと瞬間的に「柔らかく曲がらない腕」ができてしまいます。
また、トレーニング方法も開発しているのでそのトレーニングを実施してもらうと「柔らかく曲がらない腕」は短期間で身に付きます(人によっては2分トレーニングを行ったところ身につけてしまいました)。
終わりに
「柔らかく曲がらない腕」ができるような機能的脱力ができると体幹と腕はつながり、力が抜けていきます。
日本の武術では高齢の人物が若者を制するという逸話が語られることがありますが「機能的脱力」による現象を体感すると実現可能だと思えてきます。
僕は自分の才能については諦めたので誰でも身につけられる身体メソッドを開発することにしました。
今では誰でも「機能的脱力」を体感、体現、深化させるワークやトレーニングを開発できました👍