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「軍隊式姿勢」と「機能的姿勢」

はじめに

先日、facebookにてある記事が回ってきました。

ロルファー(ロルフィングの施術者)の記事です。

色々と思うことがあり今回記事にしたいと思います。

欠席裁判的に個人的意見を述べることになりますが、同じロルフィングというボディワークを提供するものとしては、このような間違っているように感じる意見を放ってもおけませんので記事のみ引用させていただきます。

記事

回ってきた記事は▼のものです。

「気をつけ」
軍隊式姿勢の名残りだから
立ち止まらせる効果は
高いかもしれないけど
脚のねじれを生む効果も絶大。

つま先を開いて立つって
全然デフォルトじゃない。

全国民的呪いを解きたい。

つまり「つま先を開く」ことは身体にとって悪いという主張のようです。

一面的には正しいのですが、別の面では間違っているように感じます。

4つの支持軸理論

人間の身体は 脳神経学的に4つのパターンが存在しています。

「ロルフィングのたちばな」ではこの 4つのパターンを4つの支持軸と名称をつけて、「 4つの支持軸理論」として体系化を進めています。

4つの支持軸とは下記の通りです。

❶内側軸(1軸)
❷中間内軸(2軸)
❸中間外軸(3軸)
❹外側軸(4軸)

これらの支持軸はそれぞれ特徴が存在し、その特徴によって文化、土着の所作、民族舞踊の動き、考え方などを説明することが 可能になります。

この特徴を理論化したのが「 4つの支持軸理論」です。

各支持軸を使っている割合が多い人種は下記の通りです。

1軸▶︎日本人に多い
2軸▶︎白人、アジア人に多い
3軸▶︎ラテン系に多い(プエルトリコ、ベネズエラ?)
4軸▶︎黒人に多い

4軸系のスポーツ、ダンスにバスケットボールやストリートダンスがありますが、なぜ日本人(1軸)がバスケットボールやストリートダンスが苦手かはこの支持軸によって明確に説明できます。

また、支持軸は自由に変換することができることがわかっているので同じ日本人が支持軸を4軸に変換すると途端にバスケットボールやストリートダンスが行いやすくなります。

軍隊式姿勢

話をfacebookの記事に戻します。

記事では足を広げて立つことは軍隊式姿勢の名残りと指摘しています。

恐らくは▼のイメージを著者は持っていると考えられます。

戦後から日本ではこうした姿勢を「軍隊式姿勢」と呼び間違った姿勢として捉えられてきました。

これは本当に間違った姿勢なのでしょうか?その根拠は何でしょうか?

自分も「軍隊式姿勢」が間違っているニュアンスのことは幼少期から見聞きしてきましたが、明確な理由を説明されたことはありません。

facebookの記事にもなぜ「軍隊式姿勢」が間違っているのかの理由が書かれていません。

実はこの俗に言うところの「軍隊式姿勢」は 4つの支持軸のうちの「内側軸(1軸)」にとっては機能が明確に発揮しやすくなる機能的姿勢となるのです。

4つの支持軸のうち2〜4軸に対してはこの「軍隊式姿勢」は確かに間違っています。

但し、日本人の多くが使っている1軸にとっては正しい姿勢となります。

これは簡単な検証をすることができます。

「ロルフィングのたちばな」ではよく合気上げという方法で検証を行っています。

合気上げとはパートナーに両手首を掴んでもらいその手首を持ち上げるワークです。

基本的には肘を固定して腕力で上げてもらうやり方を採用しています。

面白いことにそれぞれの支持軸に適した姿勢でこの合気上げを行うと簡単に相手を崩すことができてしまいます。

そこで毎週開催している軸トレ研究会にて、各支持軸を身体に通して「軍隊式姿勢」にて合気上げを行ってみました。

すると見事に1軸でのみ相手を崩すことができます。それ以外では簡単に相手に押さえられてしまいます。

感覚が鋭い人になると1軸以外では合気上げに挑戦する前の段階で

「力が入らない」
「できる気がしない」

と感想を述べられます。

面白いのは2軸文化である「バレエ」です。

バレエの特徴としてはつま先を「軍隊式姿勢」よりも極端に広げます(ターン・アウト)。

「軍隊式姿勢」では前傾姿勢になりますが、バレエでは体幹を地面に直立させます。

このバレエの姿勢で合気上げを行うと容易に相手を崩すことができます。

つまり、2軸にとってはバレエ的な姿勢が機能的姿勢になるということです。

脚のねじれ

facebookの記事では「脚のねじれを起こす効果も絶大」とあります。

これはどうでしょうか?

実は「ロルフィングのたちばな」では脚のラインを通す為につま先を意図的に開くポジション(脛骨抜きポジション)で動作トレーニングを行っています(1軸限定)。

その結果、股関節で地面と捉えるキレイなラインが通ります。

facebook記事の著者による「脚のねじれ」がどのような定義かは不明ですが少なくとも、「ねじれ」というネガティブな身体になるかといえば、必ずしもならないように思えます。

もちろん、習慣や動作トレーニングを身体に合わない強引なやり方をするならばネガティブな結果を産むでしょう。

でもそれは「形(フォーム)」としてつま先を開くことが間違っているのではなく、そもそもの身体の使用方法(素の身体の使い方)が間違っていると判断した方が論理的には正しいように個人的には感じます。

養神館合気道

支持軸の種類と身体の使い方や文化は密接に関係しています。

1軸を使って上記の「軍隊式姿勢」を取ると合気上げだけでなく合気道の技が全般的にかけやすくなります。

合気道には現在様々流派が存在していますが、この「軍隊的姿勢」を基本の動きとして取り入れているのが漫画グラップラー刃牙の人気キャラクター「渋川剛気」のモデルである塩田剛三氏が創始した流派です。

養神館合気道の稽古体系にある「臂力の養成」に「軍隊式姿勢」が見て取れます。

【毎日続けるシリーズ】臂力の養成(一)- Let’s do it together! Everyday Training Hiriki no Yosei 1

この「臂力の養成」を 4つの支持軸理論で分析すると非常に優れた稽古スタイルだとよくわかります。

養神館合気道は稽古体系としては優れているのですがその解釈が間違ってしまうと全く機能しないことになるので注意が必要です。

動画のように膝を曲げる意識で行うと居着いて機能しなくなります。塩田剛三は親指を重視していたといいますがそれが1軸を生かす為に重要です。

母趾球に乗ると1軸は機能します。

リーズニング

自分自身、ロルフィングを学んできましたがロルフィングの問題点を挙げるとすると「リーズニング(理由づけ)」をしない傾向があるという点が挙げられます。

理由づけをしないと新しいアイディアがでた際に比較検証して情報をアップデートすることができません。

また、ロルフィング界ではオステオパシーなどの手技テクニックを借用していたりしていますがこのリーズニング(理由づけ)がない為に単なる手技テクニックのコレクターになっている傾向があるように感じます。

手技の効果の理由づけがないと、様々な手技を習っているのに本質的にはセッションの結果に全く変化がなかったり、ロルフィング本来の目的から大きく離れてしまうということにつながります。

実際にそのような事例を目にしたりしています。

終わりに

ロルフィングは科学的な研究機関を持たないので測定機器などで科学的な知見を生み出すことは難しいのですが、何らかの方法で検証する習慣は身につけたいものです。

有名、無名問わずにお互い冷静に身体のことが議論できる習慣が身につくことがロルフィング自体の価値の創造につながるのではないかと思います。

この記事を書いていてやはり直接本人にfacebook記事の根拠を聞いた方が良いと思い、質問してみました。

返信を待ちたいと思います。

【追記】

ご返信をいただきました。どうやら小学生時代に「軍隊式姿勢」を指導されて上手くいかなかったことが「軍隊式姿勢」をネガティブに捉えている要因のようです。

個人的に問題だと感じるのは「上手くいかなかったこと」から「その姿勢自体が間違い」と捉えている点です。これは因果関係を混同しているように思えます。

例えば「ウェイトトレーニングでケガ」をしただから「ウェイトトレーニング」は人間の体に適していないと判断するのは論理的に間違いとなります。

ウェイトトレーニングを間違ったやり方で行えばケガをしやすくなりますが、身体に負担のないやり方で行うことでケガの発生率を低下させることができるからです。

そもそもの解釈を間違えて行っていた場合に「軍隊式姿勢」が正しいか間違っているかを問うことはできません。

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