宴会芸を達人扱いしないススメ

現在は便利な世の中になり、YouTubeで色々な動画を見ることができます。

その中に武術の「合気」的な一見不思議な現象を投稿しているものが多く見ることができます。

その中に▼のようなものがあります。

【刃牙(バキ)】渋川剛気の合気を”握手で再現”してみた

この動画のサムネイル(再生前の画像)には、

『達人技の秘密』

と書かれていますが、これは全く技でもなんでもありません。相手が感応しやすいタイプの反応を利用した宴会芸になります。

その証拠にちょっとしたテクニックを使い感応に対する『抵抗力』を高めると途端に効かなくなります。

例えば、こうしたデモンストレーションを体験できる場に遭遇したら軽く手のひらを数回叩いて刺激してから相手の手や身体に触れてみましょう。

大抵はその瞬間に全く効かなくなることが多いです。

本当にこうした現象を技化しているいわゆる「達人」と呼ばれる人の場合には自分の手を叩いて刺激を加えて抵抗力を高めても全く関係無く崩されてしまいます。

この動画の方の体験講座にでたことがありますが、大抵は生徒さんがこうした宴会芸に「かかりたい」という思いを持っていることが多い為、かなり見事にかかります。ちょっと崩れると大げさに倒れるのです。

また、こうした現象にかかりやすいようにトレーニングしたり、「かからないのは身体感覚が鈍い」からとマインドコントロールされている、かかることを望んでいるなどの要因でどのような刺激にも過度に反応することになります。

実際に動画の方に師事されている生徒さんとこうした接触系のワークを行った経験がありますが、筋力で行って本来は崩れることはありえないのに勝手に大きく崩れていました。

筋力にも感応しやすい身体になっているということです。相手がすごい人なんだと思うと自身の身体に感応反応がでやすくなります。

このような過度な感応体質になるとメリットが全く無いのではないかと思います。

仲間内ではお互いにかかるのだけど、外部の人には全くかからないということになるからです。

仲間内だけの取り組みで見事に相手を崩せる体験から勘違いしてしまい実際に格闘技の試合にでてボコボコにされた方が、僕が知っているだけでも数名居られます。

実際には仲間内で感応現象が起きたならば、それと同時に「抵抗力」を高める取り組みが必要になるのです。

僕自身、以前まではこうした宴会芸は見事に相手が崩れるので合気道よりも技術的に上なのかもしれないと考えていました。

でも実際に宴会芸のメカニズムがわかってくると全く接触系の競技(柔道、ブラジリアン柔術など)では全く使えないことが明確になってきます。

すると合気道の技がかなり合理的に構成されているのがわかってきます。

相手の筋力や感応系の抵抗力が高くても合気道の技は構造的に相手を崩せるようにできているからです。理論上は合気道で身につけた身体運用は柔道やブラジリアン柔術、総合格闘技などにも有効です。その場合にはその競技の練習をする必要がありますが。。。
※合気道にも稽古体系の未完成さや、稽古中間への忖度といった問題があります。残念ながら適切な身体運用を身につけている人はごく少数という印象です。

ちなみによく「現在の柔道は剛道だ』と言われることがありますがそんなことはありません。柔道のトップ選手は当たり前にこうした合気現象(柔の原理)を柔道という競技の中で当たり前に使用しています。コツを伝えられば宴会芸はその場でできるようになるでしょう。

テレビなどで目にする試合はそうしたトップ選手同士なのでお互いの抵抗力によって相殺しあっているので力づくのような印象になっているだけです。
※お互いに技術で実力が拮抗している場合に差がつくのは筋力といった体力的な要素になります。

こうした宴会芸を本物にする為には『抵抗力』を高める必要がありますし、柔道の試合で通用するかを基準にしてみると上達しやすいかと思います。

宴会芸と本記事では否定的なニュアンスで書いていますが、全身のまとまりが取れてくると相手の感応を誘導しやすくなりますので動作改善の取り組みの評価として使うならば無駄ではありません。

但し、それを達人技と勘違いしないことが上達する上で重要ということです。

また、

『かからないのはあなたの感覚が鈍いからだ』

と言われたらその身体系のメソッドから離れることをお勧めします。

指導者側の未熟さを生徒に転換しているからです。これはマインドコントロールの第一歩。

残念ながら身体操作系、施術系、ボディワーク系で多いですね>_<