はじめに
ロルフィング®︎の個人セッションをしているとセッション後、クライアントさんの印象がまるで変わってしまうことが多々あります。
セッション時間は90分程度ですから体重などの増減によるものではありません。
これは身体のポジションが整い「軸」が通ったことによる為です。
なぜ、軸が通ると人の印象がかわるかといえば目の「錯覚」によるものです。「錯覚」により印象として背が高く見えたり、透明感や神々しさすら生じてきます。
「軸」が通る要因というのは多数存在していますが、人の印象に1番わかりやすく影響しているのは後頭部のラインだと個人的には考えています。
個人的にもこの後頭部のラインについては課題であり色々と探求してきました。そして、つい先日後頭部のラインについての新しいアィディアを思いつき、それを自分の身体で試したところ一気に頭部のポジションが整いました。自分で鏡を見てもその印象が変わっているのがわかります。
今回はこの後頭部のラインについてご紹介したいと思います。
後頭部のラインとは?
後頭部のラインは後頭部から首(頚椎)にかけての意識が通ることで頭部が身体の真上近くに整った状態で見えてくる「印象」のことです。見ようとすれば見えるし、見ようとしなければ見えません。
但し、意図する・しないに関わらず誰もが無意識に感じています。
例えばロルフィング®︎には「音」を活用したテクニックがあります。猫背などで頭部が前方に位置しているクライアントさんに対して、背中側で指パッチンなどで音を鳴らします。その際、音に意識を向けて貰うだけで頭部が自然に後方に移動します。
これは聴覚という知覚(感覚)を利用することで後頭部付近の意識を通すことによって神経系の反応として起こるのです。
この例では結果的に後方に意識を向けることによって頭部のポジションが整ったのですが、反対に頭部のポジションが整っていれば聴覚をはじめとした音や気配を感じる能力が高まるということも成り立ちます。
どのようなメカニズムかは不明ですが頭部のポジションが整うことによって身体の周囲に対する反応が高まるのです。
武術やスポーツで姿勢の重要性が経験則として叫ばれているのはこのような理由もあります。
「錯覚」で人の印象は変わる
なぜ身体のポジションが変わるだけでその人の印象が変わってしまうのでしょうか?
それは「錯覚」の為です。
有名な錯覚の図に下記のようなものがあります。
中央の線の長さは両者とも同じですが向かって右側の方が、左側よりも長く見えます。
これと同じようなことが人の印象にも起こっているということです。
頭部が整うと重力が働く方向(地面に垂直)に身体のアライメントが近づきます。するとそのような身体を見た場合に上下に伸びていくような「錯覚」を感じる為、それだけで身長も体重も変わっていないにも関わらず印象が変わってしまうのです。
「緊張状態」は縮まって、「脱力状態」は広がって見える
筋肉の緊張した状態と脱力した状態でも見る側に「錯覚」が引き起こします。
筋肉が緊張している場合には身体の中央に矢印が向かうように縮まる印象となります(実際にも筋肉は縮まってもいる)。このような状態では硬く感じたり、実際よりも小さく、丸い印象になります。
逆に筋肉がゆるんで脱力した状態ならば身体の外に矢印が向かうように広がるような印象となります(実際に筋肉は広がってもいる)。このような状態では柔らかく、実際よりも大きく、スラッとした印象になります。
重要なことはこうした「錯覚」による印象は、見た人が意識として気づく・気づかないは関係なく無意識的に感じているということです。
ダンスはこのあたりが非常にわかりやすいです。というかダンスパフォーマンスの半分はこうした身体や動作の印象といってもよいかもしれません。
ダンスコンテストで優秀な成績を取ったからと言って、それに比例して必ずしも人気がでるわけではない理由の説明にもなります。エンターティメントという視点では技術よりもこちらの印象の方が大きなウェイトがある場合もあるように感じます。
意図的に姿勢を変えることがマイナスな理由
よく巷では、姿勢改善の方法として
「肩甲骨を背中側でよせましょう」
「骨盤を立てましょう」
「壁に背中をつけて身体をまっすぐにしましょう」
といった説明をよく見ますがこの方法を行った人の姿勢はかなり不自然に見えます。
姿勢などは結果的によくならなければいけません。
それを意図的に行うということは筋肉を過度に収縮させるということで上記の「緊張状態」の印象を作ることになります。つまりは見る側に、身体を縮ませるような「錯覚」を起こしてしまうということです。
実際にはそれだけでなく、身体のつながりなど色々なマイナス点がありますがここでは詳細は省きます。
「印象」の違いだけでこの手法が役に立たないところかマイナス要素が大きすぎるということがわかると思います。
人を惹きつけるカリスマ性
先月、ばってん少女隊のZeppツアー(4箇所6公演)を通しで見てきました。この後頭部のラインを明確に見えたのが紫担当の瀬田さくらさんです。
自己紹介時に注目が集まる演出でしたがかなり惹きつけられます。主観的ですが吸引される感じ。その時に後頭部のラインが非常にわかりやすく感じることができました。
「カリスマさんや‼︎」
と強く感じました。それだけ人を惹きつける魅力があるのです。ただ普通に立っているだけなのに神々しい。
瀬田さくらさんはばってん少女隊のメンバーの中では1番人気があります。特典会では1番遅くまで2ショット写真の列が続くほど。端正な顔立ちもその要因となっていますが、それに加えてこの後頭部のラインも強く影響していると推定しています。
瀬田さんの首や体幹の使い方は決して柔らかくありません。むしろ、全く動かない。それでも時折ですが鋭いターンをすることがあります。これは完全に後頭部のラインによる天井からの吊られる効果によるものだと思います。
この後頭部のラインは天性のものですね。
ちなみに瀬田さくらさんの右の肩甲骨がなぜか非常によく使えています。
「のびしろ行進曲」という自己紹介曲では赤色担当のリーダーの最後のパートでメンバー全員で正拳突きを繰り返す振り付けがありますが、この右腕の正拳突きが素晴らしいのです。
なぜ右の肩甲骨だけ開発されているのか非常に不思議です。元々スポーツもダンスもしていないということなので非常に気になります。
↓これは瀬田さくらさんのパンチシーンです。女の子とは思えない本格的な右ストレート。
ボクシング的な「体幹主導末端操作」系の動きです。
これと「末端主導体幹操作」系の緑の天才さんこと希山愛さんの武術的なドラム(パンチのようなムーブ)と比較すると非常に面白いと思います。
運動構造が全く異なることがわかりやすいですね。
後頭部のラインを通す方法
後頭部にラインを通す方法としては大きく分けて2つです。
①ロルフィング®︎の施術
②ムーブメントでのエクササイズ
①のロルフィング®︎の施術での骨膜リリースの「統合テクニック」と呼んでいる身体のつながりを作る施術法でラインが通ります。
②のムーブメントは頭部と体幹をつなげるムーブメントです。
この①、②は当然両方行うとより効率的に身体は変わります。
Zeppツアーで瀬田さくらさんの後頭部のラインの存在による“神々しさ”に気づいてから頭部のムーブメントを集中的にトレーニングしてみました。
特に、同じZeppツアー内で明確に認識した「末端主導体幹操作」のアイディアを頭部のムーブメントに組み合わせた新しいムーブメントを試したところかなり劇的な効果がでました。
頭部の末端主導体幹操作トレーニング
これまで開発していた頭部と体幹をつなげるムーブメントに「末端主導体幹操作」のアイディアを加えたものが頭部の末端主導体幹操作トレーニングです。
頭部の末端主導体幹操作トレーニングでは頭部の動きを体幹が邪魔せずについていくような動きを引き出していくので頭部のポジションだけでなく頚椎、胸椎の可動性が高まります。。
その為、胸椎付近まで頭部と繋がり、頚椎〜胸椎までの自由度がかなり高まります。この自由度が高まると自然に頭部のポジションを身体の真上に近いところに誘導されるので自然と後頭部のラインが形成されます。
これを体験した時「頭・首がここまで細かく動くものなのか」と密かに感動しました。骨盤車輪(骨盤を車輪のように使う身体操作)を使った脊柱のウェーブトレーニングをしてから頚椎の細分化が進んでいましたが、それがまた一段階深まりました。
実際には順番としては頭部の末端主導体幹操作トレーニングが先で、骨盤車輪ウェーブはそれを前提とした応用になります。
頭部リンク・テクニックと呼んでいる頭部を自身の手で引き上げて身体に「軸」を通す手法があります。
以前は頭部リンク・テクニックを使うと頚椎〜仙骨まで微妙に動いて脊柱全体が整う感覚があったのですが、頭部の末端主導体幹操作トレーニングを始めてからこの微妙な脊柱を修正する感覚が起こらなくなりました。
つまり、それまでは頭部が身体の真上にはまだまだ乗り切れていなかったのが、末端主導系のトレーニングを行うことより頭部が身体に乗り切る状態が身につくようになったということです。
毎月通って下さるクライアントさんは僕の立ち姿を見て非常に驚かれますね。
まとめ
この後頭部のラインは完全に印象を変えてしまうので、ダンサーはもとより人前でプレゼンをするビジネスマンにも役立つように思います。
頭部のポジションが整うとそれだけでダンスなどのターンはしやすくなります。また、脊柱に付着している筋肉も活性化するのであらゆる人に恩恵があります。
長年、自分自身の頭部や首のポジションを改善させる為に探求を続けてきましたが1つの区切りの段階まで到達できたと感じています。
この段階までは誰もが到達できるメソッドは完成したので更なる上の段階に誰もが到達できるような方法論を今後は模索していきたいと思います。
告知
今回記事でご紹介したエクササイズやワークは2019年4月開催のWS、セミナー内でご紹介予定です。ご興味ありましたら【セミナー/イベント情報】より詳細をご確認下さい。
⚫︎頭部の末端主導体幹操作トレーニング:軸トレーニングWS「基礎3点セット」
⚫︎体幹主導末端操作トレーニング:軸トレーニングWS「脊柱リンク」
⚫︎骨膜リリース「統合テクニック」:骨膜リリースセミナー「身体のつながり」
⚫︎後頭部の意識を通すことを探求(自分の弱点)
⚫︎ロルフィングでも後頭部の意識は重視される
・音
・骨膜リリース