ロルフィング®︎の成り立ち
ロルフィング®︎(正式名称:Rolfingr®︎ Structural Integuration)は、生化学者であるアイダ・ロルフ博士(1896~1979)により、解剖学・生理学をベースに確立された技法で、当初は「ストラクチュラル・インテグレーション:Structural Integlation」という名でしたが創始者の名にちなんでロルフィングと呼ばれるようになりました。
ロルフィング10シリーズと呼ばれる10回のセッションから構成され『重力との調和』というコンセプトを持ち、手技を用いて筋膜組織(Fascia)に働きかけ、カラダの各部分をあるべき場所に戻すことにより、重心線上にカラダを整えヒトが本来もつ機能を引き出します。
元々ロルフィングは治療技術として発展してきました。しかし、アイダ・ロルフは痛みに対して働きかける過程で、一見痛みが取り除かれたように見えても、また別の場所に問題が表れるという「痛みとのいたちごっこ」をたびたび経験します。
その後、根本的な問題は別のところにあると思いつき、重力に抵抗せず無理なくカラダを扱うという「重力との調和」の重要性を認識します。
その後、対症療法的ではなく“身体教育”として本質的な部分からカラダを変化させる為にカラダ全体を観るという現在のロルフィングの基礎を確立しました。
ロルフィング®︎のレシピ(セッションのやり方)
ロルフィングのレシピとは、料理のレシピがその料理の材料や調理の仕方が書かれているように10回の各セッションのテーマ、どの部位をワークするのかが示されたものです。元々は口伝で伝えられていましたが現在ではインストラクターによっては書面にまとめられて教えられています。
元々創始者であるアイダ・ロルフは独自の視点でワークを行っていましたが、ロルフィングの技法を伝える際に上手く伝えられないことに気が付きました。そこで、誰が行っても最低限の効果がでるように「レシピ」を作成しました。
面白いのは、アイダ自身はレシピ通りにワークを行ったことはないということです。また、「できるだけ早くレシピから離れなさい」とも生徒には伝えていたとも言われています。
つまり、レシピはその手順通りに行うようなものではなく、アイダが持っていた視点を身に着けるまでの代替的なツールであると言えます。
各セッションのテーマ
♯1〜3:表層部の解放
①自由な呼吸
②大地に根付いた足
③身体の側面の広がり
♯4〜7:深層部の解放
④脚の内側・骨盤底
⑤腹部の空間の確立
⑥背骨・仙骨の自由な動き
⑦首・頭の解放
♯8〜10:統合
⑧下半身のつながりと統合
⑨上半身のつながりと統合
⑩全身の統合
ロルフィングの目指すもの
ロルフィング®︎が目指すものは『重力との調和』です。
上の画像はロルフィング®︎のロゴの大元になった男の子のイラストです。10回のセッションを通して身体の歪みを整えることを【ブロックモデル】で表しています(1→2)。
※【ブロックモデル】各部位をブロックに見立ててその積み重なりで身体を分析するモデル手法。現在では施術者によって活用するモデルは様々ですが根本に変わりはありません。
10回のセッションを通して身体の歪みを整える重心線の上に身体がまとまった結果として1本のラインが見えてきます。この状態になった時がその人本来の身体のポジションになり身体の能力が十全に発揮できる状態となり、
- 腰痛がなくなる
- 腕の痺れがなくなる
- 姿勢や動きがきれいになる
- バランスがよくなる
といった改善効果が現れます。
ロルフィング®︎の創始者であるアイダ・ロルフはこうした全身が重心線上に整うことによる身体の自然治癒力のことを『重力がセラピスト』と言う言葉で表現しています。
実際にはこのような全体的なアプローチだけでなく、一般的な整体のような局所的なアプローチも交えてクライアントさんの助けになるあらゆる手法を活用して結果を引き出していきます。但し、ロルフィング®︎のセッションを行う時間が増えるほどに全体的アプローチの重要性をまざまざと実感します。
ムーブメント(動き)の重要性
ロルフィング®︎は元々施術で身体を変えていましたが創始者のアイダ・ロルフはムーブメント(動作改善)の重要性にも気づいており弟子にムーブメント・ワークの開発を指示しています。そうしてできあがったのがロルフ・ムーブメント(Rolf movement)です。
ロルフィング®︎のセッションの中にはクラシカルなムーブメントが含まれています。代表的なものが下記の2種類です。
- エルボー・ナッジ:肘を真横に突き出す動き
- ニー・ベンド:立位にて膝を曲げる動き
実際に動きを見ても何の意味があるのかわかりづらく、ロルフィング®︎の研修ではインストラクターからその意図が明確に説明されることはありません。
ただし“素の身体の使い方”という視点で観ると非常にすぐれた手法で非常に使えるテクニックだと個人的に考えています。